「ペレ」「がんばれ、リアム」 苦難に直面したその時、少年はどうするか。

何年も前に「ペレ」をビデオで見たのは、新聞で作品を取り上げた記事を読んだからだった。


1900年代初頭、デンマークからスウェーデンへ、移民としてやってきた父子。ようやく住み込みで働く農場を見つけたものの、年老いた父親は仕事に疲れきり、幼い息子ペレは近所の子供から移民だからといじめられたり、農場主の家庭の秘密を知ってしまった結果折檻されたりと、その置かれた環境は、この地の雪深く閉ざされた冬に比例するが如く厳しい。


そのぶん、少年はアメリカに憧れる。“自由の国”だと。


辛い状況を象徴するような、切るような寒さを想起させる雪原と、名優マックス・フォン・シドーを初めて見た映画だということが特に印象深い(「エクソシスト」や若い頃何本も出演したというベルイマン作品、最近出演のアメリカ映画などは、のちのち見ることとなった)。抑えた演技が素晴しかった。


そして、黙ってただ日々を耐えて過ごす少年ペレの目。決して楽にはならない暮しを見つめ、まだ見ぬアメリカを見つめる。アメリカ行きの船に乗り込めるチャンスに漕ぎつけ、いよいよ発つというその日、もう自分の年齢ではアメリカへ行くのは無理だと、農場に残るしかないと言う父と別れ、延々と続く、虚無の如く真っ白で何も無い雪原をたった一人歩いてゆく姿は、あまりに痛々しく、哀しい余韻を残す。たとえ行き先が“自由の国”であっても。


少年は戦っている。


一見して戦っているように見えなくても。「堕天使のパスポート」も記憶に新しい、スティーブン・フリアーズ監督作品「がんばれ、リアム」。10歳にも満たない少年・リアムは、話そうとすると言葉につまってしまい、なかなかうまく話せない。姉の髪を梳かしてあげるやさしい少年で、なおかつ、いつもきょうだいたちの後からついていくようなおとなしい少年だが、突然仕事を失い追い詰められた父が取った、結果として家族に酷い不幸を招くこととなった行動を、彼は懸命にとめようとする。必死に訴えてもふり払われ、焦るあまり余計に口ごもってろくに話せなくても、あらん限りの叫びを発する。原題『LIAM』が邦題で「がんばれ、リアム」となったのは、小さい少年のそんな健気さもあるだろうか。


邦題までもが応援している少年リアムは、じつに健気で、一文字に口を結んで愛らしかった。






_