「コンスタンティン」 シャツとネクタイに覚える既視感

白いシャツに黒のネクタイ、黒のコートといういでたちに加えていつもの短い髪、というキアヌ・リーヴスを見て、なんとなく「マトリックス」を思い出した「コンスタンティン」。


ひとつひとつのシーンは見せ場となっているものも多々あるのに、脇役の活躍があまりに少ないのがそれらの登場人物を生かしきれていないという印象にうつり、少々もったいない。神父のヘネシーや怪しげな物を調達してくるビーマンなどはもっと役割があってもよかったのでは、という感じだし、コンスタンティンと戦って敗れるシーン以外はさしたる動きも見せ場もないバルサザールに至っては、スーツが無駄に派手なだけになってしまっていたのがなんとも。


いまいち見せ場の少ない脇役が、わりと設定だけはしっかりありつつ何人も出てくるというのは、映画の本筋に大きく絡むかどうかに関わらず、原作の登場人物を忠実に登場させただけ、ということなんだろうか。読んだことがないので何とも言い難いものの、そういう印象は受ける。


表情をあまり変えないクールな役柄にははまるキアヌ・リーヴス、とにかくかっこいいことはかっこいいのだが、完全にその役と同化する、というよりも、本人の色の方が強く出るのはスターのスターたる所以ということか。なんにせよ、かっこいいと得だ。


ガブリエル役のティルダ・スウィントンはなんといっても「オルランド」が思い浮かぶが、あの中性的な雰囲気は今回のような役にはなるほど、というくらいぴったりだった。


そして、最後の最後に全部かっさらっていってしまうのがピーター・ストーメア。サタンの役というのがものすごく意外な配役に思えるが、眉なしメイクも際立っていたとはいえ、醸しだす異様さがとにかく凄い。これまでの作品でも、人畜無害な善人から粗野な乱暴者に悪役まで、ちょっと見ただけでは同じ人だと判らないくらいすんなりその役になってしまっていて、名優だとは思っていたものの、それにしても今回の異様さはすごい。原作通りなのかどうなのかよく判らないがなんで悪魔がそんな服装、という白のスーツに袖口や襟元からのぞく刺青のような肌の文様、眉のない蒼白な顔に口を歪めた笑い。足だけが、流出した原油にでも浸したかのようにドロドロで真っ黒に汚れているという扮装もかなり強烈だったが、立居振舞いも悪魔の怪しさ全開で、すわった目でコンスタンティンに迫るのがこれまたなかなかに不気味な迫力。


サタン(ルシファー)のシーンは、主役キアヌを取り残し、すっかりピーター・ストーメアの独壇場になっていた。演出の妙もあろうが、あんなに突き抜けた演技もする人だったとは…と、今までのイメージになかっただけに、完全に釘付けになってしまった。一方、主人公はラストでの活躍具合が微妙に不完全燃焼か。


キアヌがインタビューで大好きだと答えていたという、この映画の最後の20分間は、じつに妖しげな魅力の地獄絵図だった。







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