「バルトの楽園〈がくえん〉」

2006日本
監督:出目昌伸
出演:松平 健
    ブルーノ・ガンツ



第一次大戦中、徳島の坂東俘虜収容所のドイツ人捕虜たちと、収容所所長はじめ周囲の日本人たちとの交流、そこからベートーヴェンの第九が日本で初めて演奏されるまでが、実話をもとに描かれている。


非常に丁寧で、良心を持ってつくられた作品、という印象だ。


ヨーロッパ映画が好きな人は、クルト・ハインリッヒ総督役のブルーノ・ガンツの出演が嬉しいのではないだろうか。ブルーノ・ガンツのようなヨーロッパの名優を日本映画で見る日が来るとは、思いもしなかった。


混雑しない夜にゆっくり見たくてレイトショーを見に行くと、外国人も含めた10人程で見にきている観客がいた。映画のラスト、劇中の第九の演奏が終わった瞬間に、その外国人客の一団の席から拍手と歓声が。


エンドロールでも第九が流れ始め、すると、指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンの生前の映像が映し出される。エンドロールで使われたのは、カラヤン指揮による第九だ。思わず釘づけになる。


この作品を見終わった直後だったからか、それとも夜だったせいか、どこかしみじみと流れた第九。音が映画館に浸透した。


エンドロールもすべて終わると、先ほどの外国人客の一団から再び拍手と歓声(何年も映画館に通っているが、こういうことは数えるほどしかない)。第九は特別な空間をつくりだす。







06.6.20