「マッチポイント」 ウディinロンドン。

MATCH POINT
2005イギリス
監督・脚本:ウディ・アレン
出演:ジョナサン・リース・メイヤーズ
    スカーレット・ヨハンソン
    エミリー・モーティマー



『ネットの上のボールが、向こう側に落ちれば勝ち、こちら側に落ちれば負け。』そう言って、テニスの世界から ロンドンの上流社会へと移行した主人公クリス。


裕福な暮しを手に入れるきっかけとなった結婚と、アメリカ人女性との間で揺れ動き、ついには自らの手中の成功を守るため とんでもない“事件”を起こす。では、そこから一気に転落してしまうのか、というと、むしろ都合よく偶然が重なって、皮肉にも“完全犯罪”成立。


クリスに向けられた疑いを払拭し、完全犯罪成立の決め手となる“偶然”。その“偶然”の表すものが、この映画のもっともにくいところだ。


その“偶然”とは、ひとつの指輪がもたらしたもの。ある人物の指輪をクリスは川に向かって投げるが、指輪は橋の欄干にあたってはね返る。 『こちら側』に。


この指輪は映画の中でクリスの“成功”を守り通す決め手となるものだが、しかしクリスの言うようにテニスになぞらえれば、『こちら側に落ちたボール』だ。


一見、クリスの“勝ち”を決めたものが、“負け”をも表す。つまりこの“勝ち”は、本当の成功かどうか実はまだわからない、クリスの安堵とは裏腹に。


映画はクリスの“勝ち”で終わるが、たとえばもしこの続きをつくってみたら、その時クリスはどうなっているかわからない。思わぬ“負け”をくらっているかも。そんなことを想像させる。


どう転ぶかわかったものじゃない、人生の危うさ。それをテニスボールと指輪で語るウディ・アレン、やはりうまい。






06.9.27