「トランシルヴァニア」

TRANSYLVANIA
2006 フランス
監督:トニー・ガトリフ
出演:アーシア・アルジェント
    ビロル・ユーネル



トランシルヴァニアという地名を聞くと、無条件に思い出すのがドラキュラ。だからタイトルが「トランシルヴァニア」だというだけで、『なぜトニー・ガトリフがドラキュラものを?』と、一瞬、頭をよぎる。しかし映画の舞台がトランシルヴァニアなだけで、今回も、流浪の民族や旅を描いている。


主人公ジンガリナを演じるのはアーシア・アルジェント。前半、求めたものを失って絶望したジンガリナが、この土地の祭のにぎわいの中で、孤独を強く認識するシーンが印象的だ。


ひときわ鮮やかな色彩の祭の喧騒の中、襲いくる孤独。そして始まる放浪。冬の乾いた空気と静けさが漲る画面の中、寂莫としたトランシルヴァニアの大地は、人を拒むようにも見え、誰をも受け入れるようにも見える。


流浪の民・ロマの血を引く監督トニー・ガトリフが一貫して描いてきた旅の足跡が、トランシルヴァニアに刻まれる。






07.11.21