映画日記/記録

“Oh Captain, my Captain!” - 「いまを生きる」( Dead Poets Society / 1989 アメリカ / 監督:ピーター・ウィアー )

「アイム・ノット・ゼア」

I'M NOT THERE
2007 アメリカ
監督:トッド・ヘインズ
出演:ケイト・ブランシェット
    リチャード・ギア
    ヒース・レジャー
    クリスチャン・ベール ほか



“生ける伝説”ボブ・ディランを描いた映画。と言っても、登場人物としてのボブ・ディランは出てこない。


映画は6人の人物を追う。ロックスターや俳優、詩人に放浪者も… それら6人の人物すべてが、ボブ・ディランをモデルにかたちづくられた人物たちだ。


中でも印象的なのが、“男性ロックスター”を演じる“女優”、ケイト・ブランシェット。まず違和感がないことに驚く。違和感がないと言っても、もともとケイトが男性的というわけでもないし、男性に見えるよう外見に極端に手を加えているわけでもない。目立って違うのは髪型くらいだ。つまりはその演じ方で、自然に男性に見えるようコントロールしているわけで、ケイト・ブランシェットの演技がもはや性別すら超えてしまっているということには脱帽するほかない。


そのケイト演じるロックスターの、ロンドンのシーン。公園の芝生で、ロックスターと4人の若者が転げまわってふざけているのが、少し離れた所に小さく見える。そこだけわざと早回しにしているから、声もキャーキャーと高くなっている。さんざん転げまわった挙句、4人の若者は群衆に追いかけられながら、またも早回しで走り去ってゆく。


ロンドン ― つまりイギリスゆかりの4人の若者、追いかける群衆。そう、「ハード・デイズ・ナイト」のビートルズの4人だ(60年代日本初公開時には「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」といったらしいが)。このシーンがどこかかわいらしくて粋で、とても好きだ。エンドロールにも、ちゃんとジョン、ポール、ジョージ、リンゴ4人の名前が出ている。まさに“にくい演出”。


そして、今年1月に亡くなったヒース・レジャーが、6人の中の“俳優”を演じている。人気が出て仕事が忙しくなるごとに、シャルロット・ゲンスブール演じる妻とすれ違い、離婚し、子供とも離れて暮らすことになる。


ヒースが亡くなった時、鎮痛剤や睡眠薬の過剰摂取の原因となったのは、ミシェル・ウィリアムズと別れて娘と一緒に暮らせなくなったことが辛かったからであるとか、映画撮影の過酷さで睡眠薬がないと眠れなかったとか、訃報を伝える記事には、おもにそのようなことが書かれていた。今となってはそれらは推測しかできないことだが、演じている役柄が俳優で、なおかつ、妻子と別れることになるストーリーも、どこか実生活に重なって見えて、ラスト近くの別れのシーンなどは特に、見ていて悲しくなった。


出演しているエピソードが違うため、同じシーンでの共演こそないものの、この映画にはヒースと別れたミシェル・ウィリアムズも出ている。それもまた、今となっては寂しいばかりだ。






08.5.28