「テラビシアにかける橋」

BRIDGE TO TERABITHIA
2007 アメリカ
原作:キャサリン・パターソン
監督:ガボア・クスポ
出演:ジョシュ・ハッチャーソン
    アナソフィア・ロブ



少女が隣の家に引っ越してきたことや、学校にうまくなじめないという共通点があり、闊達な想像力で2人だけの場所をつくりあげながら無二の親友となってゆく少年と少女、そしてその悲しい別れを描いた「テラビシアにかける橋」。


児童文学が原作ということだが、ただ子供向けというだけではない、繊細な美しさをもった作品だった。


もっとも魅力的なのはやはり、2人が豊かな想像力で、森の中に“テラビシア”をつくりあげてゆくシーンや、利害などまったく関係のない、純粋な友達同士になってゆく様子なのだが、少年の家庭や、父に対する思いの描き方もこまやかだ。


5人きょうだいながら男は自分1人、あとの4人の姉妹と、苦しい家計に気を遣う日々のようす。父の、小さい妹への接し方と自分への接し方が違うことに、決して父に他意があるわけではないとよく解っていながらも、寂しく感じている様子を、台詞でなく表情で語る場面はとても繊細だ。その父親も、ただむやみに甘やかさないだけで、本当は息子のことを思っているということも描かれ、息子が父との疎外感に悩む姿を描く時によく出てくる、ただ厳しいだけの、よくあるパターンの父親像に終始しない描き方がいい。


そして、この2人の少年少女の生き生きとした姿が、とにかくこの映画の大きな魅力だ。少年ジェスを想像の世界へ導く少女レスリーを演じるのは、「チャーリーとチョコレート工場」のアナソフィア・ロブ。ユーモアと発想力、生命力を兼ね備えた少女を、作りこまれた(そういう作品なのだが)「チャーリーとチョコレート工場」とは対照的に、自然に溌溂と演じる姿がとてもいい。


ジェスが、レスリーの姿を最後に見た瞬間のシーン。土砂降りの雨の中を森から帰り、ずぶ濡れになりながら、それぞれの家へとわかれる道で、振り返ったレスリーの笑顔をジェスが見る。この時のジェスの表情は、レスリーとの強い絆を、確かに、深く、実感した顔だった。強く強くレスリーのことを思う顔だった。台詞では一言も語らない。台詞で語らなくとも、たしかにそうだと思える。そして同時に、いつまでも2人ではいられないと予感させる。とても悲しく、そしてまた、とても美しいシーンだった。


悲しい別れも描かれる本作だが、そこで物語を終えず、その後が描かれる。悲しみに沈んだ少年が、ふたたび豊かな想像力を取り戻す瞬間。そこに至るまでを描いた点もまた、この作品の素晴しさだ。


想像力で周囲の世界が違ったものに見える。それを垣間思いださせる、美しい映画だった。






08.9.7