映画日記/記録

“Oh Captain, my Captain!” - 「いまを生きる」( Dead Poets Society / 1989 アメリカ / 監督:ピーター・ウィアー )

〈それぞれのシネマ〉 ストーリーのメモ

32編の作品の、簡単なメモ。記録として残しておくためのものでもあるので、結末まで書いてある。内容は完璧とはいかないものの、ある程度記録。この作品の中に出てきた、ノートをとりながら映画を見る青年のように、この日のための記録。


〈それぞれのシネマ〉


一段一段が宙に在る、中空の階段。赤い絨毯が敷かれている。


外にしつらえたスクリーンを見る2人の人物の後姿。『なぜ 小さなこともできないのに すべてを大きくしたがるのか』 という言葉が映し出され、『フェデリコ・フェリーニに捧ぐ』 と出る。


1.夏の映画館
監督:レイモン・ドパルドン(フランス)
建物の屋上で、宵の口、映画の上映が始まる。ショールを巻いた女性たち。男性もいる。みんなで映画を見ている。周囲は薄青い。夏の夜の空気。みんな楽しそう。


2.素晴らしき休日
監督:北野武(日本)
田舎の映画館。「キッズ・リターン」が上映されているが、トラブルばかりでまともに映らない。ろくに見ないまま最後の台詞 ― “俺たちもう終わっちゃったのかな”“ばかやろう まだ始まってねーよ”― になってしまう。不満げに建物を見上げて帰ってゆく農家の男性。映写技師は北野監督自身。


3.3分間
監督:テオ・アンゲロプロス(ギリシャ)
“MMの思い出に” という言葉が映し出される。
黄色いレインコートを着た人が立っている、静かな広い建物に入ってくる1人の女性。スクリーンのある部屋に辿り着く。スクリーンの前に、客席の方を向いて座っている男性を見て、マルチェロ!とつぶやく。 ― 彼はマルチェロ・マストロヤンニ ― “マルチェロへの愛に気づいた” ―彼への思いをせつせつと語る。ふいに “3分です” との声、そして “ストップ!” の声がかかる。 ― 現実に戻る。女性はジャンヌ・モロー


4.暗闇の中で
監督:アンドレイ・コンチャロフスキー(ロシア)
フェリーニの「8 1/2」の大きなポスターが貼られている。映画館。チケット窓口には “15分で戻ります” のフダ。窓口の女性は、1組のカップルしか客のいない館内で、泣きながら「8 1/2」を見ている。盛り上がっているカップルを尻目に “売り切れ” のフダを出し、もういちど最初から「8 1/2」を見る。


5.映画ファンの日記
監督:ナンニ・モレッティ(イタリア)
シネマ・アルキメデという映画館で、髭の男性が、これまで家族と見に来た様々な映画について語る。
「レジェンド・オブ・フォール」のこと。『トリュフォーの「家庭」は、英題は「ベッドと食卓」、イタリア語では「おちつけ ただの浮気だ」だった』。 『「ホワット・ライズ・ビニース」の彼女の足が美しい…人さし指が親指より少し長い、これは優秀であることを示すらしい』。
「ロッキー」のことを話しながらあのテーマ曲を口ずさむ。「マトリックス2」の予告編を見て、見にこようと息子と話した時には、『パパの映画とは ちょっと違うぞ』 と言ったのだった。またロッキーのテーマ曲を口ずさむ、監督。“パパッパーン、パパッパーン…”


6.電姫戯院
監督:ホウ・シャオシェン(台湾)
モノクロの映像。軍人の父親と母親、子供らとで映画を見に来る。その思い出…映画館に入ると、そこは古い映画館の“残骸”。


7.暗闇
監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟(ベルギー)
暗い、上映中の映画館の中を這ってゆく少年。財布でもさぐるつもりか、こっそり少女のかばんに手をのばすと、泣きながらハンカチを取ろうとした少女がかばんに手をかけ、手探りで、そのまま少年の手を取って、少年の手で涙を拭う。
(予感 ― この“出会い”で、もはや少年は盗みなどできなくなるに違いない、少なくとも、この少女を前にしては。)


8.アブサーダ
監督:デヴィッド・リンチ(アメリカ)
暗い映画館の中、客席はカラ、誰もいないのに声だけが響く。スクリーンの前に巨大なハサミ。『踊りを見せてくれると言ったのに』― ハサミはステップを踏むように何処かへ ― そしてスクリーンに映る少女のイメージ ― ハサミで何度も刺される少女。『この夢、見たわ』 『この男がやった』と別の男の声。叫び声 ― すべてが靄に包まれるスクリーンの中、靄の向こう、踊る少女。『踊るのが好きだった』 踊りに行った日、刺されたのだ。
「インランド・エンパイア」を思わせる映像。


9.アナ
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(メキシコ)
涙を浮かべたような表情でスクリーンを見つめる女性。彼女に映画を説明する男。彼女は目が見えない。終わる直前に外に出て煙草を吸う。あとから男が出てくると、映画音楽の続きがかかる ― 『映画はモノクロ?』 『カラーだ』 キスする2人。


10.看電影(映画をみる)
監督:チャン・イーモウ(中国)
村の催しの映画。はしゃぐ子供ら。目を合わせる青年と少女。機材の準備。スクリーンに影を映して遊び、機材トラブルで途切れると、準備の青年と男性が食事を摂るシルエットが映る。それから無事上映 ― はしゃぎ疲れて居眠りをする子供。


11.ハイファの悪霊(ディブク)
監督:アモス・ギタイ(イスラエル)
ワルシャワ1936年〜70年後のハイファ。観客らの顔 ― スクリーンの映画とイメージが重なり合う。そしてハイファに空襲警報が ― 上映中止 ― 爆撃 ―多くの被害者が出る…


12.レディ・バグ
監督:ジェーン・カンピオン(ニュージーランド)
広い建物を掃除する男性。ラジオだろうか、2、3人の男女の話す声(“ジェレミー・アイアンズはゴージャス”だとか)。換気口の中に小さなレディ・バグを見つけ、捕まえようとするが捕まえられず。人間の姿のレディ・バグ、部屋を暗くして舞台仕立てにすると踊りだす。それを踏み潰そうとする男。


13.アルトー(2本立て)
監督:アトム・エゴヤン(カナダ)
女と男のいる舗道」の上映が始まるところ。メールで 『どこにいるの』 『ごめん、別の映画を見た』 『何を?』 『アジャスター』 そして「裁かるるジャンヌ」の上映が始まる。またメール ― 『アルトーは美しい』 『どう美しいの?』…映画の台詞 "La mort"(死だ).


14.鋳造所
監督:アキ・カウリスマキフィンランド
所員が映画を見る。喋らない窓口の女性とモギリの男性。その男性が映写も担当する。たった5人で見るのはリュミエール兄弟の最初の映画。やけに明るい歌がかぶさる…


15.再燃
督:オリヴィエ・アサヤス(フランス)
男女が、人の多いシネコンで待ち合わせ。別の男が見ている。話しながらチケットや飲み物、食べる物を買う(12ユーロ)。女を見ていた男はあとをつけてくる。館内で上映中、2人がキスするうちに男は近くに座り、バッグを盗って立ち去る。気づいた女性が自分の携帯にかけると、その男が出る ―


16. 47年後
監督:ユーセフ・シャヒーン(エジプト)
1954年のカンヌ映画祭の白黒映像から始まる。出品された映画に出ているらしき若い男女2人が話す。新聞の批評を気にしている。評判は芳しくない。そして1997年のカンヌ。50回記念特別賞(功労賞)のユーセフ・シャヒーン ― 実際の映像だ(プレゼンターはソフィー・マルソー)。
『この日を47年待ちました。若者にアドバイスを。耐えろ、それは報われる』 1954年の若者はユーセフ・シャヒーンだった。


17.是夢(これは夢)
監督:ツァイ・ミンリャン(台湾)
若い頃の父が夢に出てきて、ドリアンを食べている。年老いた母もいる。映画に行くと、いつもナシを買ってくれた祖母(写真が置いてある) ― 2人の男女が映画館で映画を見ている。


18.職業
監督:ラース・フォン・トリアー(デンマーク)
かしこまった席だ。タキシードやドレスで映画を見る人々 ― 映画祭のよう ― 1人の男が、隣の眼鏡の男に話しかける。スクリーンにはウィレム・デフォーが映る、「マンダレイ」だ。職業がどうのこうのと、やたらと話しかけられて、迷惑そうな眼鏡の男。『で、君は何をしてる?』 ― そう言われた次の瞬間 ―『殺す。』
眼鏡は、その男をカナヅチで滅多打ちにして殺してしまう。座りなおすと、また映画を見続ける。「マンダレイ」の台詞が重なる ―『怖がらないで 奴隷制度は70年前に廃止された 法に従わないなら力づくでやめさせる』
眼鏡の男は監督、ラース・フォン・トリアーのようだ。


19.贈り物
監督:ラウル・ルイス(チリ)
盲目の博物学者と姪の会話。未開の地の部族の話。ラジオや映写機を渡したら、分解して壊してしまったのに、いつのまにか木で作り直していた。 『「カサブランカ」を3分間で上映して、そのあと私は目が見えなくなった』 ―


20.街角の映画館
監督:クロード・ルルーシュ(フランス)
主人公とその父母の “映画館年代記”。自分が生まれる前、映画館で出会った両親。その時の2人が見た映画。自分も映画を見るようになる(見ながらノートもとっている)。父が死んだあと、年老いた母が、映画館のスクリーンで “あの日の俳優” に再会する。懐かしい、と笑顔。 ― 『ありがとう、父さん母さん』
実話がもとかもしれない(そうならいいのに)、と思わせるストーリー(実際のところはわからないが)。


21.ファースト・キス
監督:ガス・ヴァン・サント(アメリカ)
人のいない映画館で、少年がスクリーンに映画を映し出すと、青い海と水着の少女。少年は映画の中に入って少女とキスをする。映画のワンシーンになる。


22.エロチックな映画
監督:ロマン・ポランスキー(ポーランド)
夫婦らしき2人が、ガランとした映画館で映画を見ている。と、妙な声を出す男性客。苦情を係に言うと、たしかに変だと支配人が声をかける。チケットには、2階席と ― 2階から落ちて、苦痛の叫びを上げていたのだった。


23.最後の映画館における最後のユダヤ人の自殺
監督:デヴィッド・クローネンバーグ(カナダ)
カメラに映し出される1人の男。ニュースの実況の声 ― そこは世界で最後の映画館。男の映像を見ながら実況する2人は、映画館などない方がいいと言ったり、女のほうは “映画館を知らない世代” だったり ―
あらゆるユダヤ人の中の最後の1人である、ハンガリー系ユダヤ人のこの男が自分で頼んだ自動のカメラ。映画館のトイレで自殺を試みる。『館内はゴミだらけだからトイレでしようとするんでしょう』 『処刑も選べたのに自殺を選んだなんて…』と実況。銃をくわえる男 ―
男はクローネンバーグ監督自身。


24.君のために9千キロ旅してきた
監督:ウォン・カーウァイ(香港)
”君のために9千キロ旅してきた” ―音声から判る、「アルファヴィル」を見ている2人。暗い中、手を握りあい ―


25.ロミオはどこ?
監督:アッバス・キアロスタミ(イラン)
美しい、ショールをかぶった女性たち。女性たちは泣きながら映画を見ている。美しい瞳。「ロミオとジュリエット」を見ている。あの有名な曲がかかる。“ケラドマンド夫人に感謝” との文字が出る。


26.最後のデート・ショウ
監督:ビレ・アウグスト(デンマーク)
デンマークの男性が、デンマーク語の通じない中東出身と思しき女性と、デンマーク映画を見る。英語で説明しながら、時に映画の台詞にはない言葉 ― 『君は美しい』 『結婚してくれ』 ―も織りまぜる。3人の男に黙れと言われ、支配人に苦情を言ってその男たちを追い出すと、もう出ようと女性に言う。しかし 『2人が結婚するか、最後まで映画を見たい』 と女性(サスペンスなのに、台詞にないことを言ったからだ)。最後に2人は結婚すると嘘をつき、忘れ物をとりに行った間に、さっきの3人組とその女性は、映写室から映画を見ていた。『どうも結婚するようには思えないわね』 と笑う。


27.臆病
監督:エリア・スレイマン(イスラエル)
上映中のスクリーンの前を人が通るたびに、スクリーンの中の登場人物がそれを目で追い… 映写室に1人の男。画面の中から撃たれると煙とともに消えて、また現れて、神出鬼没。さらにトイレで挙動不審。トイレの中に落とした携帯で呼び出されると、講演会場のような所に戻る。『銀のプジョーをどけてくれないと 車が出られない』 と伝言され、車を動かすと、宗教家を何人も乗せた車が出て行く。


28.唯一の出会い
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ(ポルトガル)
“フルシチョフと 法王ヨハネ23世の唯一の出会い”
無声映画のように、モノクロで声はなく、字幕が出て、エリック・サティの曲がかかっている。白い法衣の法王。目の前で十字を切られて、拳を上げる格好をするフルシチョフ
フルシチョフはミシェル・ピコリが演じる。薄いグレーの上品なエンドロール。


29.カンヌから5557マイル
監督:ウォルター・サレス(ブラジル)
ブラジルはミゲル・ペレイラという所で、「大人は判ってくれない」を上映している小さな映画館。2人の男の会話 ― 『知らない』 『何言ってる、賞をとった映画だ、俺はカンヌに行ったから知ってる』… そんなやりとりのあと、今年のカンヌは60年…と歌いだす2人。軽やかなリズムで歌う。―歌い終わると、『本当のことを言う、俺はカンヌに行ってない』 『なんで知った』 『インターネット。小さな漁港の街だ、親玉はジル・ジャコブ』 …


30.平和の中の戦争
監督:ヴィム・ヴェンダース(ドイツ)
アフリカのどこかの村。みんなでテレビで映画を見ている。テレビの映画の音が重なる。そしてこの映画そのものもモノクロになり、音が激しくなり、見入る子供らの顔、顔… 外はまるで何事もなかったかのような夕暮れ。
“2006年、10月のこと、植民地、独裁、戦争を経た村の 平和の最初の年”…
映画は「ブラックホーク・ダウン」。


31.チュウシン村
監督:チェン・カイコー(中国)
チャップリンの映画を見ている子供たち。映写機が壊れて、自転車につないでみんなでこいで回す。自転車の影も映る。車輪のまわる音、楽しそうな子ら、チャップリンも走る。セピアがかったモノクロ。遅くなってきて、男が本気では怒っていないものの こら、と言いつつやってくるとみんな逃げてゆくが、1人の子が残っている。目が見えないのだ。
そして2007年。1人の男が映画館に。その時の少年だ。


32.ハッピーエンド
監督:ケン・ローチ(イギリス)
父親と、小学生くらいの息子が映画館に。見るものをなかなか決められない少年。父は息子に自分で決めさせたい。しかし “チケットを早く買いたいんだ” と、列の後方から文句がでる。“いいじゃないの親子で来てるんだから” と加勢してくれる婦人も現れるが、迷ってチケットを買わないうちに、列もどんどん長くなる。どうしますかと係に言われ、何を見るのかと思ったら ― 結局サッカーを見に行ってしまった!外に出た2人にサッカー場の歓声が重なる。
(監督から、“映画に入れあげる気持ちはこれくらいで充分” と言われているかのようだ)



―エピローグ―
モノクロ。古めかしい正装で映画を見ている人々。若い女性と紳士。 『ハッピーエンドは?』 『ええ 好きよ』 『僕もだ』


FIN.ルネ・クレールに感謝” と映し出される。