映画日記/記録

“Oh Captain, my Captain!” - 「いまを生きる」( Dead Poets Society / 1989 アメリカ / 監督:ピーター・ウィアー )

「家宝」 こわい女。

O PRINCIPIO DA INCERTEZA
2002 ポルトガル=フランス
原作:アグシティナ・ベッサ=ルイーシュ
監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ
出演:レオノール・バルダック
    レオノール・シルヴェイラ
    リカルド・トレパ ほか



9月27日から10月17日まで、大阪は九条のシネ・ヌーヴォで上映された、マノエル・ド・オリヴェイラ監督特集。「クレーヴの奥方」、「わが幼少時代のポルト」、そしてこの「家宝」の3本を見に行った。


ポルトガルの著名な女流作家というアグシティナ・ベッサ=ルイーシュ原作。オリヴェイラ監督作品のすべてを見ているわけではないが、「家宝」で描かれるこの女性、カミーラは、これまでに見たオリヴェイラ作品でもっとも “こわい女” だ。


“あやしい関係” のビジネスパートナーの女性がいると分かった上で、資産家の男性との結婚を決め、幼友達の男性から反対されても、私の家が決して楽ではないことは知っているでしょう、と聞き入れない。結婚後は、資産家の優雅な妻、という外見からはほど遠く、食事の席ではイヤミや皮肉が飛び交い、夫の裏切りもあからさまだ。それを耐えているのかと思うと、最後にとんでもないことが起き、しかもカミーラがその “とんでもないこと” に関わっていたことも示唆される。


それらをふまえた上で見るラストシーンの笑顔は、様々な想像を喚起して、すこぶる怖い。


幼い頃から、その美しさや気の利いた受け答えから、“この家の宝” と言われて育ち、周囲からも特別な女性として扱われ、望んだ “上流” への仲間入りを果たしたものの、いざ人生にままならないことがあれば、かなり強引なやり方で、それを自分の思うように変えてしまう。


いつも特別扱いされながらおっとり育ったような女性の、どこにそんな気丈さが、という感じだが、カミーラ自身が、これも生きていくための術のひとつ、くらいにしか思っていなさそうに描かれる様がますます怖い。


映画そのものが非常に静かで、一般的な起承転結とは関係なく展開し、会話が印象的なところはまさにオリヴェイラ作品、と思うが、実際には、オリヴェイラ作品の中でもかなり異色という気がしないでもない。謎めいた初老の兄弟など、個性的な登場人物によって、不思議な味わいも感じられる。


そして、オリヴェイラ作品でたびたび名前を見るレオノール・シルヴェイラ。「永遠の語らい」では若い母親、「クレーヴの奥方」では修道女、そしてこの「家宝」では、うって変わってハデで皮肉屋のビジネスパートナーと、様々な表情を見せる。だから監督も好んでキャスティングするのだろう。






08.10.15