「クリムト」 絢爛と頽廃。

KLIMT
2006 オーストリア=仏=独=英
監督・脚本:ラウル・ルイス
出演:ジョン・マルコヴィッチ
    ヴェロニカ・フェレ
    サフロン・バロウズ
〈兵庫県立美術館 “KEN-Vi名画サロン” での上映にて〉



1900年代初頭。死の床に就き、いまにも冥府へと旅立とうとしている画家、グスタフ・クリムト。かつてウィーン分離派の中心的存在で、華麗で絢爛、耽美的な妖しい美しさを持った画風が愛された画家も、いまは一人。死の床の彼のそばにいるのは、彼の影響を大きく受けた画家、エゴン・シーレだけ。朦朧とした意識の中、クリムトの脳裏に、まるでそこにあるかのようにこれまでの人生が甦る…


実際のクリムトには、猫を抱いた姿で写っている、よく知られた写真があり、そのイメージからすると、ジョン・マルコヴィッチはどうも雰囲気が違う気がするが。


クリムトといえば、もう5〜6年は経つだろうか、かつて見た展覧会を今も思い出す。ちょうど、今回この映画を見に行った兵庫県立美術館で見たものだ。あの、“世紀末ウィーンの美” を、実物を目の当たりにした展覧会。


まるでどこまでも繰り返す瞑想を目に見える形にしたかのような、繊細な幾何学模様。 『ユディット』 の華麗な美、 『パラス・アテナ』 の妖しい魔術的な美。そして壁画 『ベートーベン・フリーズ』 のレプリカ…


思わず引きこまれて溺れそうな官能美。世紀末の頽廃の薫りを纏った大輪の花。それがクリムトの美だった。






09.2.20