「ロシュフォールの恋人たち〈デジタルリマスター版〉」

〈ミュージカル〉
Les Demoiselles de Rochefort
1967 仏=米
監督・脚本・作詞:ジャック・ドゥミ
音楽:ミシェル・ルグラン
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ
   フランソワーズ・ドルレアック
   ジーン・ケリー
   ミシェル・ピコリ
   ジョージ・チャキリス

〈登場人物〉
ドヌーヴ:デルフィーヌ/ドルレアック:ソランジュ =ガルニエ姉妹
J・ペラン:マクサンス(あと3日で除隊)
(姉妹の母)マダム・イボンヌ:ビュル・オジエ
末の弟ブブ
祭りで知り合った芸人のふたりビル(金髪)&エチエンヌ(黒髪)=シェルブールで出会ったというふたりは、バイクのスタントなどをイベントで披露している
アメリカ人作曲家アンディ・ミラー:ジーン・ケリー
アンディの音楽学校時代の友人シモン・ダム(ピアノ店オーナー):ミシェル・ピコリ
ウェイトレス:ジョゼット
飛行機の模型を作る祖父:ペペ
ペペと40年ぶりに再会した空軍時代の仲間:デュトル
デルフィーヌの元彼の画商:ギヨーム


金曜の朝〜土曜の朝〜日曜(祭り当日)〜月曜の朝 までの物語

ジャック・ドゥミだからこそのファンタジー、ドゥミの色彩。真正面からメルヘンチックなファンタジーだ。そして、ことあるごとに、ミシェル・ルグランの音楽が頭の中に甦る。何度も聞いたことのあるあの曲。


“人生の春”を謳歌するような、祝祭のような映画。悲しいでもなく、悲しいことを思い出した訳でもなく、ただあまりに輝いているこの映画の、その美しさに、涙が出そうになる。


パステルカラーの映画だ。60年代のファッションも洒落ている。特に女性のワンピースなどはとても素敵だ。


ケリーのミュージカルシーンには英語もひとことふたこと入る。見せ場のひとつ、タップもある。


通り過ぎる街なかの人たちがみんな踊っている。祭り会場では、それぞれのダンスなどが同時に催されている様子が次々映る。


マダム・イボンヌ(若いころ、シモン・ダムと付き合っていたが、“マダム・ダム”になるのが嫌だった、と言う)が、ペペをパパと呼ぶシーンが。ソランジュはおじいさん、と。ソランジュといえば、下着(コンビネゾン)ネタで3回かぶせるのが笑いどころ。デルフィーヌは、バレエ教室を閉める時も、教室は閉鎖よ、とそっけない。


おじいさんが40年ぶりに会った旧友デュトルが、大きなニュースになった殺人犯だった、という展開は、ドゥミ映画にはなんとなく意外。住宅街で女性をめった刺し、バラバラ死体がトランクに、被害者はフォリーベルジュールでいちばんの踊り子、ローラ・ローラ60歳。自宅で凶器発見、新聞を読んで、デュトルが犯人だとわかる。40年愛した女にふられ、カッとなってめった刺しにした、と。紙面の名前が、“Zが抜けてるから怒るわ”とマダム・イボンヌ。


理想の人を探し続けているというマクサンスの設定のメルヘンさ。肖像画の恋。最後まで、デルフィーヌとマクサンスだけは、劇中で出会わない。しかし、会うことを予感させるすれ違いで終わる(ペペに新聞を取ってくれと言われ、その間にマクサンスが荷物を取りにきてすれ違いになる)。恋の予感だけを漂わせる。粋なラスト。暗くなって、音楽だけ、水色のエンドロール。


ロワールの谷から ラインの川くだって … 歌詞が印象に残る。






2009.3.10/4.8