「ザ・スピリット」

THE SPIRIT
2008 アメリカ
監督:フランク・ミラー
出演:ガブリエル・マクト
    サミュエル・L・ジャクソン ほか



ウィル・アイズナーの1940年代のアメリカンコミックが原作ということで、なおかつ、「シン・シティ」などのグラフィックノベルの作者フランク・ミラーが、単独としては初めて監督を務め実写化した、「ザ・スピリット」。


なんというか、変なシーンは ― サミュエル・L・ジャクソン出演シーンを中心に ― いっぱいあるのに、妙に単調な印象を受ける。「シン・シティ」を念頭に見てしまうからか。モノトーンと赤を基調とした色のイメージもあるだろう。作品のよしあしは別として、「シン・シティ」は、とりあえず、それぞれのエピソードごとにそれなりの面白みがあったのだが(ベニチオ・デル・トロの“首”とか、殺人鬼なイライジャ・ウッドとか)。『絵をそのまま実写に置き換える』 ことを第一としたつくりであるためか、なんだかストーリーがおまけのようである。


数ある変なシーンの中でも、「キル・ビル」風味の、誤解いっぱいな和風シーンは、その最たるものだ。しかしそんなシーンを堂々と演じ上げるサミュエル・L・ジャクソンその人こそが、この映画の見所といえる。なんせ、あのベテランの大物が、あの役である。アメコミが大好きだというサミュエル・L・ジャクソンが、おかしな役柄でおかしなシーンを思いっきり楽しそうに演じている姿を見るにつけ、『サミュエルが、好きなことできて楽しそうでよかった…』 と、妙にほのぼのした気分になれる。






09.6.17