「君と歩く世界 RUST AND BONE」 作品と宣伝の落差

De rouille et d'os

2012 フランス=ベルギー

原作:クレイグ・デイヴィッドソン

監督・脚本:ジャック・オーディアール

出演:マリオン・コティヤール

   マティアス・スーナールツ

 

ジャック・オーディアール監督の作品を、今まで見たことがあったかどうか、いまいちよくわからない、もしかしたら見たことなかったんじゃないか、と思ったが、監督の これまでの作品タイトルを調べたら、「真夜中のピアニスト」(2005)は確かに見逃したものの、「リード・マイ・リップス」(2001)と「預言者」(2009)は見ていた。「預言者」が比較的最近の作品であることを考えたら、ずいぶんといいかげんな記憶である。

 

というのも、オーディアール監督作品、今回の作品含め3本を見た、と言っても、わりとどれも毛色が違うために、この監督の作風、というのが いまだはっきりと掴めない。だから、ああ、この監督の映画なら以前あれを見たな、というふうに思い浮かんでこないのだった。

 

今回、シネコンでの上映で見たが、フランス・ベルギー合作作品がシネコンでかかるのは珍しい。“シャチのトレーナー” を主人公としているあたり、わりと観客の興味をひくと思われたか(しかし、怪我をして以降を中心に描いているため、シャチのシーンはそう多くない)、マリオン・コティヤール主演なら “アカデミー主演女優賞受賞者”、昨年公開の「ダークナイト ライジング」を代表作として挙げることができるなど宣伝材料がいろいろあった、ということか、と、なんとなく思うなど(実際にどういう経緯でシネコン上映になったのかは、もちろん知らない)。

 

ポスターなどでは、海のイメージを強調(色や、主人公がシャチのトレーナーであること)し、さも希望あふれるストーリーであるかのようなキャッチコピーをつけているが、実際のこの作品には、苦しい生活や、行き詰まり、人生のどん底を這いまわるかのような人間の姿、絶望を味わう姿も描かれている。“シャチのトレーナーが、重傷を負いながらも希望を持って生きる話” 的な宣伝とは、わりと落差がある。宣伝文句が多少、きれいごとに過ぎるか。監督の視点には、説得力がある。

 

 

2013/4/17