見直して気づく、あらためて知る

このほど、ベルナルド・ベルトルッチ監督の作品を、いっときに何本かまとめて見る機会があった。特集上映にて、二度目の「暗殺の森」(1970)と、初めて見る初期長編作品3本だ。

 

ことに、二度目の「暗殺の森」が非常に印象深い。初めて見た時にももちろん、美しいと思いはした。しかし、この作品の中には、初めて見た時の自分には見出すことのできなかった美しさが、なおも存在していた。もし二度目に見直す機会がなければ、そのことには気づかずじまいだったはずだ。

 

初期の長編3本では、ベルトルッチ監督特有の、映像表現上の美しさは既に備えていながらも、以降の作風とは一味違う面を見ることができた。長編第2作「革命前夜」(1964)と長編第3作「ベルトルッチの分身」(1968)に顕著だが、若き日のベルトルッチ監督が、ヌーヴェル・ヴァーグに傾倒していたという点だ。なんでも、ジャン=リュック・ゴダール監督に心酔していたという。先述の2本にはその影響が見て取れ、ベルトルッチ監督によるヌーヴェル・ヴァーグ的作品というのは、イメージになかった分、非常に新鮮だった。

 

これまで、ベルトルッチ監督作品を、そう多く見てきたわけではない。今回、まとまった数の作品を見たことにより、監督の演出手腕の凄さをあらためて考え、映像表現の美しさをあらためて目の当たりにしたことは、とても有意義だった。ただ、これまでの自分が気づけなかった その先まで、とは言っても、無論、これだけで監督の作品のすべてを理解できたということではない。それは当然だ。しかし、その一端を垣間見る機会ではあったはずだ。

 

かつて見た作品をもう一度見たり、ひとりの監督、ひとつのテーマに沿った特集上映などの機会がめぐってこなければ、新たに気づくことも、見たことのない作品について知ることもなかった。こういう機会は貴重だ。

 

この春、ベルトルッチ監督の、「ドリーマーズ」(2003)以来の新作「孤独な天使たち」(2012)が、日本でも公開された。前作からそんなに間があいていたか、と驚いたが、聞くところによると監督は、この10年近く、病のために何度かの手術やリハビリの必要があったため、思うように映画を撮ることができなかったのだという。こうして新作を制作できるようになったことは、喜ばしい限りだ。

 

 

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