「マーヴェリックス 波に魅せられた男たち」

Chasing Mavericks

2012 アメリカ

監督:カーティス・ハンソン

    マイケル・アプテッド

出演:ジェラルド・バトラー

    ジョニー・ウェストン

    アビゲイル・スペンサー

    エリザベス・シュー

    レヴェン・ランビン

    スコット・イーストウッド

 

22歳で夭折した実在のサーファー、ジェイ・モリアリティと、その師と言える存在フロスティ・ヘッソン、ふたりの師弟関係を軸とした伝記映画である。幼少時のジェイがサーフィンと出会い、フロスティと出会い、そして16歳で、カリフォルニア州サンタクルーズ沖に出現するという伝説の大波、“マーヴェリックス”  に挑むまでが描かれている。

 

そういう映画であるが。

 

観客である自分はというと、サーフィンへの興味は皆無といっていい。だからこの作品も、あいた時間にただなんとなく見に行っただけだった。しかし、実際見てみると、見に来てよかった、見逃さなくてよかった、と思うような秀作。やはり映画は、興味ない題材の作品だから、と頭から切り捨てず、どんなものか試しに見てみると、優れた作品を知ることのできる確率が高くなる、と改めて思った(だからと言って、すべての映画を見ることは当然不可能なわけだから、やはりその時その時の巡り合わせと言えるだろうが)。

 

ジェイの、サーフィンへの情熱やフロスティを慕う気持ち、周囲の人々との関係などが、丁寧かつ印象深く描かれており、サーフィンを描いていても、スポーツ映画という雰囲気は案外しない。

 

ジェイと幼馴染が会話したりふざけたり、ちょっとしたことで行き違いが生じるなどのシーンが、非常にその年頃の若者らしく、自然だ。また、ジェイの精神面を鍛えようとレポートを書くことを課した(観察する目を養うため)フロスティが、サーフィンとまったく関係のないこと(恋愛)を書いて寄越したジェイを叱咤するが、フロスティの妻が、“彼は個人的で大切なものを明かした、それは彼があなたを心底信頼しているからだ” とたしなめるその言葉。“生まれてくる息子もいれば、出会う息子もいる” と、ふたりの関係を表す言葉。ラスト、ジェイがマーヴェリックスに挑むシーンに重なる言葉(父を失った過去の克服、“長く生きられるとは思っていなかった” など)。そこかしこに、印象に残る言葉がある。

 

波や天候の情報を聞くためにいつもフロスティがかけているラジオを見て、ジェイが、そのラジオとまったく同じものを欲しいと思うところが好きだ。一見、些細なことのようでありながら、人の心情が細やかに描かれているそういうシーンが、いくつもある。

 

ひとつ付け加えるなら、ラストについて。マーヴェリックスを制覇したシーンのあと、その後ジェイが22歳で没するまでをごく短く表し、最後に、皆が海でジェイを追悼するシーンで終わる。実在した人物を描いているわけだし、おそらく、そこも事実に基づいているのかもしれないが、映像的には、ジェイがマーヴェリックスを制覇したところで終わっておき、その後のことは言葉(ナレーション、字幕等)で語り、あの追悼シーンを描かないほうが、高揚した気持ちのまま見終えることができたのでは、という気もする(ラストにワンクッションあることにより、エンドロールに入る前に我に返ってしまう)。しかしこれは見る側の好みに関することでもあるだろうし、実在した人物のことゆえ、そういうところまで描いておきたい、などもあったのかもしれないが。

 

マーヴェリックスに挑むシーンの映像に迫力があり、美しい。

 

 

2013/6/18