「嗤う分身」

THE DOUBLE

2013 イギリス

原作:フョードル・ドストエフスキー 『分身(二重人格)』

監督:リチャード・アイオアディ

脚本:リチャード・アイオアディ、アビ・コリン

出演:ジェシー・アイゼンバーグミア・ワシコウスカ、ウォーレス・ショーン、ノア・テイラー

 

ドストエフスキーを原作に、舞台を近未来に置き換えたものだが、いい意味で、それほど近未来的に見えず、まるで古く錆びついた歯車が軋んでいるかのような印象も受けるし、むしろ、時代を特定する必要性すらないとも思える。それが美しい。

 

ずっと、電球が切れたように画面の中が暗い。主人公の不安がそのまま可視化されたかの如き闇がのしかかってくる、とても悪夢的な雰囲気だ。悪夢的であると同時に、そこに惹かれる。その、画面の中の暗闇が、上映中の映画館の暗がりにそのまま地続きに繋がっているかのように思えた時に、とても居心地よく感じられ、冷たく、温度のない不安に支配されている、この映画の中の世界を、このまま見続けたいと思った。

2014/11/21