「わが幼少時代のポルト」

PORTO DA MINHA INFANCIA
2001 ポルトガル=フランス
監督・脚本・出演・ナレーション:マノエル・ド・オリヴェイラ
出演:リカルド・トレパ
    マリア・デ・メディロス
    レオノール・シルヴェイラ



オリヴェイラ監督の故郷、ポルトガルはポルトを舞台に、その少年期など、過去と時代を綴った自伝的作品「わが幼少時代のポルト」。


今はもうない、しかしそれを見るにつけ、なんとも言い難い様々な思いが呼び起こされるという、生家の写真。制作当時すでに90歳を越えていた監督の、年齢を感じさせないハリのある声が淡々と語り、そして挟み込まれる、女性の声による子守歌か何か、おそらくとても古いであろう歌は、幼少時代を懐かしみながら、それがもはや遠のき二度と戻らない日々であることを歌い、もの悲しい。


終始淡々として、そして静かなその語り口。「家路」をふと思い出す、監督が子供の頃に見たという舞台の劇中劇。いつしか遠く過ぎ去り、形を変え、その姿はいまや記憶の中にとどめるのみの、幼少時代のポルト。


そのままに形をとどめることなく流れてゆくもの、その無常は、もの悲しく、憂いを帯びて、しかしなぜそれを忘れることができないのだろう。






08.10.8