「パレルモ・シューティング」 死が語る、『死は唯一の出口だ』と。

PALERMO SHOOTING
2008独=仏=伊
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:カンピーノ
   ジョヴァンナ・メッツォジョルノ
   デニス・ホッパー



主人公フィンの見る、夢の光景が印象深い。


死そのもの、擬人化された《死》を演じるのは、デニス・ホッパー。彼が亡くなる2年前、2008年制作の映画だ。フィンの夢(あるいは深層心理か)の中、「私なくして生を理解することはできない」と言う。そして、「なのに死は恐れられ、忌み嫌われる。誕生の手助けをすることは愛されるのに」「私は人生の一部なのに」、と語る。《死》が自らこんな言葉を語ることが印象的だ。


今死にたくないという気持ちもあって、諦めて死を受け入れろと言う《死》に向かって自分に何かできることはないかとフィンが問うと、「死を敬え、私の肖像を撮るがいい」、そうすれば今回は死を逃れ、次に会うのが最後だ、と言われ、その通りカメラを向けるフィンは、そもそも街で《死》の姿を追い続けていた時点で、もうとっくに死に魅入られていたのだろう。ラスト、目を醒ましたフラヴィアが「you…」と言葉に詰まり目を瞠る顔を大きく映し出したまま、この映画は終わるが、フラヴィアがそこに見たのはフィンの顔ではなく、《死》の顔をしたフィン、つまり、死んだフィンだったのではないか、という気がしてならない。


「死は唯一の出口だ」と、《死》の語る言葉が脳裡に焼きつく。ちなみに《死》が、デジタルは、フィルムと違って実存を証明しない、というようなことを言うが、この台詞には監督の考えが反映されているのだろうか?


ジョヴァンナ・メッツォジョルノが美しい。「愛の勝利を ムッソリーニを愛した女」での演技が素晴らしかったのも記憶に新しいところだ。


ああ、そして、ヴェンダースデニス・ホッパー…… ヴェンダースが監督し、ホッパーも出演している「アメリカの友人」が、とても好きだった。






2011.9.28