2012年の映画10本

2012年に公開され(※8のみ昨年末からの公開)、見に行った数々の映画の中で、特に印象深かったもの10本。


1. 裏切りのサーカス
TINKER TAILOR SOLDIER SPY
2011英=仏=独 監督:トーマス・アルフレッドソン


2. ダークナイト ライジング
THE DARK KNIGHT RISES
2012アメリカ 監督:クリストファー・ノーラン


3. ぼくたちのムッシュ・ラザール
Monsieur Lazhar
2011カナダ 監督:フィリップ・ファラルドー


4. ローマ法王の休日
Habemus Papam
2011伊=仏 監督:ナンニ・モレッティ


5. ミッドナイト・イン・パリ
MIDNIGHT IN PARIS
2011スペイン=米 監督:ウディ・アレン


6. ドライヴ
DRIVE
2011アメリカ 監督:ニコラス・ウィンディング・レフン


7. イル・ディーヴォ-魔王と呼ばれた男-
IL DIVO:La spettacolare vita di Giulio Andreotti
2008伊=仏 監督パオロ・ソレンティーノ


8. GOMORRA ゴモラ
Gomorra
2008イタリア 監督:マッテオ・ガローネ


9. 別離
Nader and Simin, A Separation
2011イラン 監督:アスガー・ファルハディ


10. EVA〈エヴァ〉
EVA
2011スペイン 監督キケ・マイロ



年末公開の「レ・ミゼラブル」や「ホビット 思いがけない冒険」は未見。
このほか、10本に入るか入らないかのところで、ゾンビ革命-フアン・オブ・ザ・デッド-(Juan de los muertos/2011スペイン=キューバ/監督:アレハンドロ・ブルゲス)、愛の残像(La frontiere de l'aube/2008仏/監督:フィリップ・ガレル)なども印象的だった。


1〜10としているが、選ぶ時の気分によっては、順番の多少の入れ替わりもあり得る程度のものである。特に1〜3は、その3本どれもが素晴らしい映画であり、それぞれがまったく違う制作規模・手法・方向性の映画なため、3本どれもが素晴らしいということは言えても、優劣などつけ難い。よって、1〜3に限っては、日本での公開の早かった順、つまり、見に行った順番そのままである。


見る者が酔いしれるほどの名演と、映画としての、格調高き “形” を見せてくれたのは、1と4。 ハリウッド映画の醍醐味と、1人の監督が3部作を通してあれだけのものを作りあげるというその手腕、そして見事なまでの終わりと始まりを見せてくれたのは 2。 窓際で揺れるカーテンの影の如く、はかなく、せつなく、美しい映画は3と10。 見終わった瞬間の幸福感なら 5。 計算され尽くした間の取り方と映像表現、独自の人物描写なら6と7。 他に類を見ないほどのリアリティを持った、静かなる迫力を纏うのは 8。 脚本の巧さでとことん見せ切るのは9、という感じだろうか。


なお、8.「GOMORRA ゴモラ」について書いた、リアリティに関して。
この映画の持つリアリティというのは、「裏切りのサーカス」や「ダークナイト ライジング」を評する際に度々言われたものとは、ある種、別次元である。つまり、この2本が、“プロの手でもって美しく造形された、フィクションの中で求め得る限りの、設定上可能な限りのリアリティ” を持っているとするならば、「GOMORRA ゴモラ」が持つリアリティというのは、まさに、“生身” と呼べる感覚である。ハリウッド映画には最早不可能な表現である。これは、前者が劣るという意味ではない。両方存在することこそが重要である。







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