「タイガー 伝説のスパイ」「闇の帝王DON ベルリン強奪作戦」 インド映画初鑑賞

「タイガー 伝説のスパイ」

EK THA TIGER

2012 インド

監督:カビール・カーン

出演:サルマーン・カーン

 

インド映画の評判というのはかねがね聞いていたわけだが、今回、初鑑賞のはこびに。ということで、「タイガー 伝説のスパイ」は、初鑑賞に相応しく、様々な要素の詰まった面白さだった。

 

まず、展開に無駄がない。インド映画は比較的長いものが多いように聞いていたが、132分のこの作品は、非常にテンポがよく、過剰な説明がなく、まとまりがいい。スパイアクションであり、冒頭などは、ジェイソン・ボーンシリーズを彷彿とさせる、建物飛び移り、屋根走行シーンも。それでいて、主人公が意外と愛嬌のあるキャラクターだったりするところは、ハリウッドのアクション映画とは一味違うところか。なおかつ、“敵の正体” を知って衝撃を受けるシーン、敵も味方も双方欺くシーンなどのスパイものらしさ、恋愛映画としての側面、そして、インド映画といえば、のミュージカルシーンと、1本の映画に様々な要素が盛り込まれている。

 

その、“インド映画名物” ミュージカルシーンについては、やはり映画というものは、評判を聞くより評論を読むよりまず見るべき、と思ったのだった。というのも、これまでインド映画のミュージカルシーンについて聞いていた話は、とにかく突然始まる、ストーリーに直接的な関係がないのに突然入る、などというものであったが、実際見てみると、ことにこの「タイガー~」では、通常のシーンからミュージカルシーンへの入り方が非常に巧い。そこへ主人公の空想が織り込まれたり、心情を物語ったりする。凝ったシチュエーションの映像により、作品の見せ場となっているが、登場人物の心情を描いているということは、(その作品のもつ性格にもよるだろうが)ある意味心象風景のシーンであるともいえ、必ずしも、“ストーリーに直接的な関係がない” とは限らない。なおかつ、上に書いたような様々な要素のほか、この作品にはインド・パキスタン問題も絡めているため、ラストでは、メッセージ性もさりげなく打ち出している。とにかく、サービス精神にあふれた映画という印象だった。

 

 

「闇の帝王DON ベルリン強奪作戦」

DON2

2011 インド

監督:ファルハーン・アクタル

出演:シャー・ルク・カーン

 

“インド最大のスター” とされるシャー・ルク・カーンの主演作も、今回初めて見た。と思ったら、原題からして、いきなり続編を見てしまったようであるが(劇中にも、前作と思われる過去のシーンが出てくるが、うまくストーリーに溶け込ませてあるので、前作を知らなくとも理解に問題はない)。

 

「タイガー~」の主演サルマーン・カーンとは、これまたずいぶんと違った印象のシャー・ルク・カーン。監督の演出の違いもあろうが、ミュージカルシーンのダンスはシャー・ルク・カーンのほうが堂に入っているかもしれない(あくまでも、この2本を見ただけでの印象であるが)。そういえば、かつてスパイク・リー監督の「インサイド・マン」(2006)冒頭、銀行強盗のシーンで使われた音楽が、インド映画「ディル セ 心から」(1998)のものであるということだが(曲名:Chaiyya Chaiyya)、あれは、スパイク・リー監督がどうしてもあの曲を使いたくて、使用許可を取ったものだったとか。「ディル セ 心から」はシャー・ルク・カーン主演作とのことだ。

 

「闇の帝王DON~」は大物犯罪者とそれを追うインターポール、という設定だが、計画実行、裏切りが予測される仲間を切るための手段、警察との駆け引き、計画成功後まで、ずいぶんと手が込んでいる。ベルリン市街でのカーチェイスシーンも。

 

 

初めて見るインド映画となった「タイガー 伝説のスパイ」が特に面白かったということもあって、インド映画に以前よりも興味がわいた。今後、公開作が更にふえるといいが。

 

 

2013/5/15