「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」 途切れない因縁
The Place Beyond the Pines
2012 アメリカ
監督:デレク・シアンフランス
出演:ライアン・ゴズリング
ベン・メンデルソーン
取り返しのつかない出来事、後悔、因縁、復讐などにまつわる物語である。「ブルーバレンタイン」(2010)のデレク・シアンフランス監督と主演ライアン・ゴズリングのコンビが、この映画でふたたび。
監督の前作、「ブルーバレンタイン」でもそうだった。服装であるとか、画面の中の細部のリアリティに目がいく。ちょうどいい具合に、かっこ良すぎない。服装や、疲労の浮かぶ表情などの生活感が絶妙だ。生活に追われて、そんなものに構っていられないという “あの” 感じが、非常によく計算されている。
ライアン・ゴズリングは、一匹狼的な役柄が似合う。焦った瞬間の、声が裏返る演技など、なかなか。それから、4月公開の「ジャッキー・コーガン」(2012)に出ていて、どこかで聞いた名前だと思ったら「アニマル・キングダム」(2010)で見たことのあったオーストラリアの俳優、ベン・メンデルソーンの、まさに生活感あふれたグダグダな感じ(「ジャッキー・コーガン」でもかなりのものだった)、ゲイリー・オールドマン風味の入った顔立ちで かもし出されるあのグダグダ感がたまらない(巧すぎる)。今後の出演作でまったく違った役柄も見てみたい。ブラッドリー・クーパーは、出演シーン前半にて着ている衣装の生活感はいいのだが、いかんせん本人の風貌が、その生活感の邪魔をしている感じか(つまり、二枚目すぎる)。一転、後半のスーツ姿ははまっている。「ハングオーバー!」シリーズや「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」(2010)のような、いかにも二枚目な役どころがやはりいちばん似合うということか、致し方ない。エヴァ・メンデスが、こう言ってはなんだが、思っていた以上によかった。
監督は、「ブルーバレンタイン」の時のように、過去と現在を交互に見せるような演出は今回していないが、登場人物たちの映画の中での生活において、服装から台詞まで、細部にまでリアリティを求めている点は一貫している。
ラストにおいて、ルーク(=ゴズリング)の息子は、クロス(=クーパー)の息子にもクロス自身にも、復讐を遂げようとして、すんでのところで思いとどまる。ここでかつて書いたこともあったが(「帰らない日々」の項目にて)、こういう点に、作り手が何に重きを置き、何を言いたいのかが表れる。「イン・ザ・ベッドルーム」(2001)で、父は、息子を殺した男に復讐を果たし、「帰らない日々」(2007)では、ひき逃げで息子を失った父は、復讐を思いとどまる。「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」では、やむにやまれぬ気持ちを抱えながらも復讐しない、ということを選んだのだ。
2013/5/29