「スプリング・ブレイカーズ」 もしかして見掛け倒し
Spring Breakers
2012 アメリカ
監督・脚本:ハーモニー・コリン
出演:セレーナ・ゴメス
アシュレイ・ベンソン
レイチェル・コリン
ジェームズ・フランコ
ハーモニー・コリン監督作品を見るのは初めてで、作風のイメージなども持ち合わせていないが、それにしても、感覚の違いなのかなんなのか。
あまりにも、共感も感情移入もできないのだ。
とは言え なにも、映画を見る際、必ずしも、共感あるいは感情移入をしなければならない、というわけではない。まったくしなくても構わないのだ。映画の見方など、何通りあってもいいのだから。
共感できなかった理由というのも、“春休みに遊ぶお金がないからダイナーでアルバイトしよう”、とならずに “春休みに遊ぶお金がないからダイナーで強盗しよう” と発想する女子大学生が描かれているから、とか、そういうことでもなく。たしかに、もし実際にこんな女学生がいたらちょっとどうかと思うが、そんなことは関係ない、なぜなら、これはあくまでも映画だ。これまで、本当に素晴らしいと思う映画にも、強盗や、突飛な行動を取る人物というのはたくさん出てきているわけで、なにも、社会の規範をはずれた人物像が描かれているから即ダメだ、共感できない、ということではない。そんなことを言っているのではない。
つまるところ、とにかくもう “この映画が持っている感覚”(作り手が持っている感覚、と言い換えることも出来る) と自分の持っている感覚とが、違いすぎるということだ。それも、描かれている人物が取っている行動の良し悪しについて、などという意味ではない。なにを美しいと思うか、とか、そういう感覚を指す。色とりどりの水着姿やどぎついシーンや過激なシーンがあっても、ほぼ何の感慨も感じなかったとすら言える。
そういう役柄がこれまでほとんどなかったジェームズ・フランコが、珍しくチンピラを演じていて、それがとてもそれらしく見えて、こういう演技もするのか、と、ほかの映画での演技との違いが新鮮に感じられた、というのはある。そうやって、ジェームズ・フランコの演技のバリエーションで楽しむくらいしか、自分としては、楽しめる点がなかったのであるが。
破滅的で刹那的、だったら必ずいい映画に仕上がる、とも限らないわけだ。
ラストも、車で走り去るシーンで終わるなら、いっそのこと「テルマ&ルイーズ」(1991)的オチへ持っていくぐらいのほうがよかったのではないか、という気がした。好みの問題であろうが(ただ、描かれている人物像はそういうタイプではないように思うので、このラストのほうが人物像に合っている、ということになるかもしれないが)。
本国で、将来カルト映画になるかもしれない、と評した評論家がいたとかで(そういうのをチラッと読んだ)、ある意味それはあり得ると思うが、たとえそういう風に扱われたとしても、それはこの作品の “外観” や、映像からくるイメージゆえのことで、それ以上のものではない、と感じている。
2013/6/19