「野いちご」 記憶と過去

イングマール・ベルイマン監督 生誕95周年

特集上映〈イングマール・ベルイマン 3大傑作選〉の1本

〈デジタルリマスター版〉

Smultronstället

Wild Strawberries

1957 スウェーデン

監督・脚本:イングマール・ベルイマン

出演:ヴィクトル・シェーストレム

    イングリッド・チューリン

    ビビ・アンデショーン

    グンナール・ビョルンストランド

    マックス・フォン・シドー

第8回ベルリン国際映画祭 金熊賞 受賞

 

 

悪夢と記憶と過去。いつまでも、それは影のようについてきて、離れようとしない。そこに時間の経過はない。その時のままあり続けて、その時のまま呼び起こされて、その時の痛みを繰り返す。苛まれ続ける。

 

この映画で描かれている夢も、主人公に、決して安寧な眠りを許さず、過去はどこまでもつきまとう。不安が悪夢となって眠りに侵入し、記憶が過去との決別を阻む。不条理な夢、湧き起こる記憶の波、しかし、モノクロで描かれるそれらは、不安の色を含んでいるにも関わらず、美しい。そして、やはり悲しい。

 

忘れ難い記憶を、頭の中で繰り返す。老境にさしかかった主人公の中に去来するのは、未来ではなく、過去である。それらが、現実の今日一日と重なって、互いに影響を及ぼす。現実が過去に及ぼした影響で、見る夢が変化する。映画の最後には、安寧の眠りだ。いつも、記憶と過去に苛まれている人間が、もっとも欲するものである。

 

 

2013/8/25