「グッドナイト&グッドラック」 時代の翳り。

GOOD NIGHT, AND GOOD LUCK.
2005アメリカ
監督・出演:ジョージ・クルーニー
出演:デヴィッド・ストラザーン
    ロバート・ダウニーJr.



1950年代、赤狩りをおしすすめる上院議員マッカーシーを批判する番組を制作した大手テレビ局報道キャスター、エドワード・マローの実話をもとにした「グッドナイト&グッドラック」。マローが番組の最後に毎回必ず口にしたという、トレードマークともいうべき一言をそのままタイトルにしている。


音楽はない。バーで歌手が歌うシーンがあるだけだ。抑制されたつくりは終始一貫している。その時代のテレビと同じモノクロの画面は、手の皺のような細部までを映し出す繊細さだ。


マローの出演する報道番組の舞台裏のシーン。放送前の現場のバタバタした雰囲気、刻々と針をすすめる時計、音楽のない分冴える物音によって緊迫感がおのずと画面に流れる。


静かながら鋭い目つきと細おもてが理知的に見えるデヴィッド・ストラザーン。印象深いのは、ストラザーン演じるマローがカメラを見つめるその目だ。視聴者に訴えかけるマローの視線を、演じるストラザーンが観客に投げかける。一点を見つめる視線、陰翳によって白目の部分が強調された目は、まるで何もかも見抜いてしまいそうな目だ。その目が真正面から観客をとらえてしまう。


赤狩りといえば、98年のアカデミー賞を思いだす。赤狩りの嵐が吹き荒れた時代に仲間の名を売ったとして、当時ハリウッドを追放されたという監督、エリア・カザンが名誉賞をとった年だ。会場の反応には、もう時効だろう、という拍手と、非難のブーイングとが入り混じっていたのだとか。プレゼンターはロバート・デ・ニーロだった。






06.5.31