2005-01-01から1年間の記事一覧

2005年に見た映画 BEST20

今年の映画では、ヴェンダース、ゴダール両監督の新作が公開されたのがファンとしては嬉しい限り。なんせこの二人の監督の作品は、見にいく時にへんに気合いをいれすぎて勝手に緊張までして、結果、疲れてしまうくらいに好きだ。 今年は、比較的年の後半にな…

「山猫〈イタリア語・完全復元版〉」 褪せることない名作。

IL GATTOPARDO(PERFECT RESTORATION/ITALIAN VERSION) 1963イタリア=フランス 監督:ルキノ・ヴィスコンティ 出演:バート・ランカスター アラン・ドロン 1963年のルキノ・ヴィスコンティ作品、「山猫」。3時間に及ぶこの大作は、見終わるとある種の達成…

「キャスト・アウェイ」/「ブラス!」 Fedexを見るとトム・ハンクスを思いだす。

トム・ハンクスが20kg以上も減量して出演した無人島漂着映画、「キャスト・アウェイ」。 無人島での唯一の“心の友”だった、流れ着いたバレーボールとの涙、涙の別れ(!)で観客にまで涙させた(…はず)トム・ハンクス。劇中ではFedexの社員という設定で、飛…

「マイ・ファーザー」

MY FATHER, RUA ALGUEM 5555 2003 伊=ブラジル=ハンガリー 監督:エジディオ・エローニコ 出演:チャールトン・ヘストン トマス・クレッチマン 「ヒトラー 最期の12日間」が公開されたばかりのこの夏、それほど間をおかずに公開された「マイ・ファーザー」…

阪神優勝のその瞬間、とある映画ファンの空白の2時間。

阪神タイガースが2年ぶりのリーグ優勝を果たした昨晩。 石を投げれば確実にトラファンに当たるに違いない土地柄、野球にはまったく縁のない映画ファンでも、今日ほぼ間違いなく優勝、という情報だけは小耳にはさんでいたものの、そちらは熱狂的トラファンに…

第62回ベネチア国際映画祭

8/31〜9/10のベネチア。 金獅子賞はアン・リー監督作「ブロークバック・マウンテン」。監督賞はフィリップ・ガレル「Les Amants reguliers」(邦題:「恋人たちの失われた革命」)。 主演男優賞は、「グッドナイト&グッドラック」のデヴィッド・ストラザー…

「わが家の犬は世界一」 カーラをとりもどせ!

CALA,MY DOG 2002中国 監督:ルー・シュエチャン 出演:グォ・ヨウ シア・ユイ 主演グォ・ヨウのひょうひょうとした雰囲気が好きだ。動物の出てくる映画ながら、へんに情緒的でないところもいい。 家での存在感の薄い中年男が、高額すぎる料金のせいで登録証…

「埋もれ木」 日々と幻想の間をながれる。

2005日本 監督:小栗康平 出演:夏蓮 田中裕子 田舎の町の静寂と情緒は、そういえばこういう景色が決してきらいではなかったと、記憶とイメージを呼び起こす。 思わぬところに異世界への入口が現れる。 誰もいない造りかけの道、水溜まりに映りこむクジラの…

「大いなる休暇」 ひきとめ大作戦劇場。

LA GRANDE SEDUCTION 2003カナダ 監督:ジャン=フランソワ・プリオ 出演:レイモン・ブシャール デイビッド・ブータン 医者が1人もいない過疎の島に工場を誘致するには、島に医者がいなければならない。 唯一ひっかかった1人の医者を島に定住させようとする…

「チャーリーとチョコレート工場」 毒のある華々しさ。

CHARLIE AND THE CHOCOLATE FACTORY 2005アメリカ 監督:ティム・バートン 出演:ジョニー・デップ フレディ・ハイモア ティム・バートンとジョニー・デップが作り上げたウィリー・ウォンカは、毒々しく奇妙で、とても魅力的だ。 初日の10日、レイトショーで…

「Dearフランキー」 手紙の効能。

DEAR FRANKIE 2004イギリス 監督:ショーナ・オーバック 出演:エミリー・モーティマー ジェラルド・バトラー イギリスの、海に近い町の雰囲気がいい。 少年の別れた父親を船乗りだと言って、母親が父親を装って少年に手紙を送り続ける訳だが、同封された切…

「チーム★アメリカ ワールドポリス」 皮肉と嘲笑の人形たち。

TEAM AMERICA:WORLD POLICE 2004アメリカ 監督・脚本・声:トレイ・パーカー 脚本・声:マット・ストーン あえて人形劇で、しかもかなり下品なシーンも多い分、風刺・批判の精神よりもバカバカしさの方が際立つ。もちろんそれが狙いだろう。 政治的発言が多…

「失われた龍の系譜 トレース・オブ・ア・ドラゴン」 ジャッキーのルーツ。

TRACES OF A DRAGON JACKIE CHAN & HIS LOST FAMILY 2003香港 監督:メイベル・チャン 出演:ジャッキー・チェン ファン・ダオロン 激動の中国史に重なる、ジャッキー・チェンの両親の人生を追想するドキュメンタリー。 ジャッキー自身もほんの数年前まで知…

「ライフ・アクアティック」 海と人生。

THE LIFE AQUATIC WITH STEVE ZISSOU 2004アメリカ 監督:ウェス・アンダーソン 出演:ビル・マーレイ オーウェン・ウィルソン ケイト・ブランシェット あえてチープに作られたセットやいまいち緊迫感のないとぼけた銃撃戦、凝った小道具に架空の動物、何も…

「アイランド」 もうほとぼりはさめたのか?

THE ISLAND 2005アメリカ 監督:マイケル・ベイ 出演:ユアン・マクレガー スカーレット・ヨハンソン 監督が「パール・ハーバー」のマイケル・ベイなだけに、一抹の不安を感じつつ、ユアン・マクレガーとスカーレット・ヨハンソンというキャスティングにひか…

「宇宙戦争」 破壊の果て。

WAR OF THE WORLDS 2005アメリカ 監督:スティーブン・スピルバーグ 出演:トム・クルーズ ダコタ・ファニング 恐怖を感じた時の人間の反応や、生きるか死ぬかの瀬戸際になると人を蹴落としてでも自分だけは助かろうと争いを繰り広げる人間の姿の描き方は、…

「50回目のファースト・キス」 波の如くいつまでも繰り返す。

50 FIRST DATES 2004アメリカ 監督:ピーター・シーガル 出演:アダム・サンドラー ドリュー・バリモア この作品、ハワイのゆったりした感じもいいが、とにかくドリュー・バリモアがかわいい。 何度も同じことを繰り返すアダム・サンドラー演じる主人公が、…

「ベルリン、僕らの革命」 若い熱。

DIE FETTEN JAHRE SIND VORBEI 2004ドイツ=オーストリア 監督:ハンス・ワインガルトナー 出演:ダニエル・ブリュール スタイプ・ウェルツェグ ユリア・イェンチ 金持ちの家へ入り込み、物を盗むでもなく、まるでオブジェのようにただ家具を積み上げ、『THE…

「ほら男爵の冒険」 自由闊達な冒険映画。

BARON PRASIL 1961チェコスロバキア 監督:カレル・ゼマン 出演:ミロシュ・コペルツキー ヤナ・ブレイホヴァー 実写と人形アニメを融合させたチェコの映画はとても好きだが、カレル・ゼマン監督作品を見るのは初。 独特の着色に舞台装置のようなセット、昔…

「キングダム・オブ・ヘブン」 それでもリドリー・スコットが好き。

KINGDOM OF HEAVEN 2005アメリカ 監督:リドリー・スコット 出演:オーランド・ブルーム リーアム・ニーソン ジェレミー・アイアンズ リドリー・スコット監督作品にしてはなぜかいまいち手に汗握ることもなく。やはり「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズや…

「ザ・インタープリター」「リチャード・ニクソン暗殺を企てた男」 さいきんのショーン・ペン。

THE INTERPRETER 2005アメリカ 監督:シドニー・ポラック 出演:ニコール・キッドマン ショーン・ペン THE ASSASSINATION OF RICHARD NIXON 2004アメリカ 監督:ニルス・ミュラー 出演:ショーン・ペン ナオミ・ワッツ 偶然たて続けに公開された、ショーン・…

「スター・ウォーズ エピソードⅢ:シスの復讐」 27年目の完結。

STAR WARS EPISODEⅢ:REVENGE OF THE SITH 2005アメリカ 監督:ジョージ・ルーカス 出演:ユアン・マクレガー ヘイデン・クリステンセン 新3部作では、このEPⅢがいちばん面白い。オビ=ワンとアナキンの熔岩を背景にした一騎討ちから、アナキンがダースベイダ…

「メリンダとメリンダ」 それはつねに表裏一体。

MELINDA AND MELINDA 2004アメリカ 監督:ウディ・アレン 出演:ラダ・ミッチェル クロエ・セヴィニー ウディ・アレンの、“人生における喜劇と悲劇”に対する考えが表れていて面白い。 出発点は同じでも、ちょっとしたことで思わぬ方向へ転がってゆく。なにご…

「ヒトラー 最期の12日間」 最後の日。

ドイツ映画界が真正面からヒトラーを描いた初めての作品と言われている、「ヒトラー 最期の12日間」。 ヒトラーを描いた作品の中でも今までにない、“ドイツ映画界で作られた”という点でどのような作品か非常に興味があったのと、名優ブルーノ・ガンツの演技…

「バットマン ビギンズ」 ヒーロー映画にイギリス俳優。

今までのシリーズはテレビでちらっと見たことくらいしかないものの、最新作にはよくまぁここまで偶然が重なったというくらい好きな俳優ばっかりが出演していて、それだけでもじゅうぶん見る理由になった「バットマン ビギンズ」。 アメコミのヒーローが主人…

「コンスタンティン」 シャツとネクタイに覚える既視感

白いシャツに黒のネクタイ、黒のコートといういでたちに加えていつもの短い髪、というキアヌ・リーヴスを見て、なんとなく「マトリックス」を思い出した「コンスタンティン」。 ひとつひとつのシーンは見せ場となっているものも多々あるのに、脇役の活躍があ…

第58回カンヌ国際映画祭

5/11〜5/22のカンヌ映画祭。 パルムドールは「ある子供」、ダルデンヌ兄弟が2度目の受賞。グランプリはジム・ジャームッシュの「ブロークン・フラワーズ」。 トミー・リー・ジョーンズが主演男優賞を受賞した「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」は、…

「マッチスティック・メン」「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」「ペーパー・ムーン」 騙し騙され何処へゆく。

リドリー・スコット監督作品にしては珍しく軽いタッチながら、余裕すら漂わせているあたりがさすがな「マッチスティック・メン」。詐欺で大儲けしてプール付きの豪邸に住んでいる、ニコラス・ケイジ演じる主人公。潔癖で、ドアを閉めたかどうかの確認でも鍵…

「フライト・オブ・フェニックス」 砂漠を飛ぶのに必要な準備。

ゴビ砂漠に不時着した、石油会社の貨物輸送機。そこへ乗り合せた、本来乗るはずではなかった謎の男が、残った部品と貨物を使って飛行機を造り脱出しよう、と突拍子もないことを言い出す、「フライト・オブ・フェニックス」。 何人もの死者を出してしまう、砂…

「変身」 カフカを、舞台のように。

カフカの同名の小説を原作とした、2002年の異色のロシア映画、「変身」。 グレゴールという男がある朝目覚めると、その体が毒虫に変わっていたという、言わずと知れた不条理劇だが、この映画では虫になってしまってからの姿も、人間の姿のままでグレゴール役…