映画日記/記録

“Oh Captain, my Captain!” - 「いまを生きる」( Dead Poets Society / 1989 アメリカ / 監督:ピーター・ウィアー )

第87回 アカデミー賞

2月23日(現地22日)、第87回 アカデミー賞のおもな受賞結果

 

アカデミー賞の前哨戦と呼ばれる各映画賞の結果で、その年の流れのようなものがだいたい浮かびあがってくる。いわゆる賞レース期間前半の結果では、「6才のボクが、大人になるまで。」と「グランド・ブダペスト・ホテル」が作品賞を競うかに見えたが、後半、「バードマン あるいは (無知がもたらす予期せぬ奇跡)」の存在感が増し、いつのまにか「6才~」と「バードマン~」のどちらかになるだろう、という印象に取って代わって、最終的には「バードマン~」が作品賞を勝ち取った。

 

監督賞は、同じ俳優が同じ役を12年間演じ続ける(年に1度、1週間ほど全員が集まって撮影)という形で作品を作りあげた「6才~」のリチャード・リンクレイター監督にかなり分があるように見えたが、フタを開けてみれば、「バードマン~」のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が受賞。昨年のアルフォンソ・キュアロン監督に続き、2年連続でメキシコ出身の監督の受賞となる偶然(監督本人もスピーチでそのことに触れた模様)。

 

演技部門がもっとも下馬評通りの結果であったか。主演・助演 各賞、最有力と言われた俳優が受賞している。いっとき、どうなるかわからないと言われた主演男優賞も、当初の評判通りに。「バードマン~」マイケル・キートンの復活も広く受け入れられたのだとは思うが、実在の人物を演じた俳優が特に高い評価を受けるという、いつもの傾向が、今回も当てはまった(もちろん、ただ実在の人物の役柄でさえあればいいというのではなく、演技そのものが評価された上での受賞であることは言うまでもないが)。

 

「バードマン~」で撮影賞を受賞した撮影監督エマニュエル・ルベツキは、昨年「ゼロ・グラビティ」でも同賞を受賞。2年連続の受賞は19年ぶりとのこと。

 

外国語映画賞は、ポーランドの「イーダ」。これも、堅いと思われた作品が予想通りに、という印象。ポーランド映画のノミネートといえば、アンジェイ・ワイダ監督の「カティンの森」が いまだ記憶に新しいが、ポーランド映画の外国語映画賞 受賞は、ノミネート10回目にして、初めてのことであるという。

 

新しい作品を発表するたび、毎回といっていいほど、必ず何部門かにその作品がノミネートおよび自身も監督賞にノミネートされる、という監督もいれば、どれほど その監督手腕が認められようが、どれほど作品の評価が高かろうがヒットしようが、驚くほどアカデミー賞に絡んでこない監督もいて、今回も、(おかしな言い方かも知れないが)面白いほどはっきりと、その傾向が表れた。「インターステラー」のクリストファー・ノーラン監督や、「ゴーン・ガール」のデヴィッド・フィンチャー監督は、監督賞にノミネートされてもおかしくなかったと思うし(つまり されなかった)、作品そのものも もっと賞に絡んでいてもよさそうなものであったが(つまり それほど絡んでこなかった)、予想通りといってはなんだが、ノミネート段階からして どちらも過小評価だった、という印象。「インターステラー」は技術系5部門のノミネートで作品・監督賞はなし(くどいようだが、入っていても おかしくなかったと思うのだ)。「ゴーン・ガール」も、ノミネートは主演女優賞のみで、確実視されていた脚色賞にはノミネートすらされず驚かれた。両監督ともに、この “アカデミー賞における過小評価傾向” に当てはまっている印象が以前から強く、入っていてもおかしくなかったのに、と言っている自分自身も、じつのところ、今回も監督賞には入らないだろう、と思っていたのではあったが(ちなみに、この2作品においては、「インターステラー」が視覚効果賞を受賞したのみである)。

 

前哨戦と呼ばれる各映画賞において、他の受賞作品と比べると それほど目立たなかった「アメリカン・スナイパー」が作品賞にノミネートされたことは、少なからず驚かれた。その後、本国で驚異的な大ヒット、「プライベート・ライアン」の持つ記録を塗り替えて、戦争映画史上最高の興行収入を現在も更新中であるという。今回、6部門にノミネートされていたが、受賞は、音響編集賞の1部門のみにとどまった。思い出したのが、ある年のアカデミー賞である。その時々の状況において、受賞結果に何らかのメッセージが込められている、というふうに受け取られる場合があり(もちろん、そうであると明言されるわけではない)、思い出したのは「クラッシュ」が作品賞を受賞した年だ。「ミュンヘン」や「グッドナイト&グッドラック」と同時にノミネートされ、結果として「クラッシュ」が受賞したのは、もっとも政治色の薄い作品だったからだ、という見方が当時あった(あくまでも “ひとつの見方” であって、そうだと明言されたものではない。実際、保守的な考えを持つ人の多いアカデミー会員が「ブロークバック・マウンテン」を避けた結果だ、という見方もあった)。その年のことを、ふと思い出したのだった。ちなみにこれは、あくまでも “「アメリカン・スナイパー」の受賞が1部門のみにとどまったこと”  によって思い起こしたものであり、“「バードマン~」の受賞理由” について言っているのではない。「バードマン~」が消去法的に受賞した、という見方ではないので、あしからず。

 

今回、最多ノミネートだった「バードマン~」と「グランド・ブダペスト・ホテル」がそれぞれ4部門受賞、「セッション」が3部門受賞、ほかは1部門受賞作が多数、という結果に。他の追随を許さないほどの高評価を受ける大作がある年には、ひとつの作品が10部門近く受賞するようなこともあるが、そのような年から見れば、多少、地味な印象であったかもしれない(ただ そうである、というだけで、それが駄目だという意味ではない)。

 

作品賞受賞の「バードマン あるいは (無知がもたらす予期せぬ奇跡)」は、4月10日 日本公開。

 

 

2015/2/23