「ダ・ヴィンチ・コード」 読むか、観るか。
THE DA VINCI CODE
2006アメリカ
監督:ロン・ハワード
出演:トム・ハンクス オドレイ・トトゥ
原作小説がさんざん話題をまいている中、監督・出演者らが映画仕様のユーロスターでカンヌへ乗りつけオープニング上映。賛否両論から3日、公開初日の「ダ・ヴィンチ・コード」を見に行った。
映画での描かれ方に気を揉んだり上映反対を唱えたりしていた宗教関係の方々は、そんなに目くじら立てなくても多分大丈夫だ。
ロン・ハワードが監督だからかトム・ハンクスが主演だからか、良くも悪くも、いかにも“ハリウッド的”。ドキュメンタリータッチで撮られてでもいるならいざ知らず、いわゆるハリウッド大作が果して見た人の宗教観にそこまで影響するかといえば、とてもそうは思えない。だから、“宗教を冒涜している”なんて心配をする必要はない。なんでもネタにするのがハリウッドだと、もうわかりきっているのだから。
「ダ・ヴィンチ・コード」効果で、最近とみにレオナルド・ダ・ヴィンチその人や遺された作品、それにまつわる様々な解釈が、原作を読んでいなくても耳に入る。信憑性が高いと受け取られたり、捏造だと言われるものもあったりで解釈もいろいろだが、なんというか、映画を見る前にそれらを見聞きしすぎた。
そのせいで、原作を読まずに映画で初めて「ダ・ヴィンチ・コード」のストーリーに触れるにも関わらず、“ああ、あの話か”“あの話か”と、新鮮な驚きが味わえなかった。驚きを求めるなら情報をそれほど仕入れずに見るほうがいい。
原作小説が面白い、という評判も聞きすぎていた。評判がよすぎると何が飛びだすかという期待をどうしても持ってしまうが、どうも不発。せっかく好奇心をそそる面白いテーマを扱っているのに、それぞれのエピソードはへんに手が込みすぎてる分、出来過ぎの感が強い。それらを力わざで詰め込めるだけ詰め込んで、急ぎ足で進行するストーリーのせいで、ミステリーの味わいもなにもあったもんじゃない、という印象。もっと漲る緊張感と深みがほしかった。
イアン・マッケランとジャン・レノの役柄については『あれ、そうなの?』くらいは思うのだが、かんじんのトム・ハンクスとオドレイ・トトゥ演じる2人の“秘密”が描かれるくだりは、そこまでにある程度予想がついてしまうのが残念。
余談だが、ルーヴル美術館で撮影された映画はすでにフランス映画にあるので、「ダ・ヴィンチ・コード」では、“ハリウッド映画初 ルーヴル美術館内で撮影”と銘打っていた。フランス映画では、ソフィー・マルソー主演の「ルーヴルの怪人」というのが実際に館内で撮影したということだったが、どうもいつのまにやら忘れられてるもよう、「ダ・ヴィンチ・コード」に関する記事などを読むと、あれだけルーヴルでの撮影に言及していたわりに、それに関連してこの作品名がでることはほとんどなかった。たしかに、どうにもこうにもがっかりしてしまう作品ではあったが。ドキュメンタリー映画なら、「ルーヴル美術館の秘密」というのがある。こちらは美術館好きには非常に興味深い、ルーヴルの裏側が垣間見られる。
なんにせよ、話題性ゆえか、どの上映回ものきなみ完売となっていた「ダ・ヴィンチ・コード」のチケット。
ちなみに、イアン・マッケランの出演シーンが予想以上に多かったのが、じつはいちばん嬉しかったことだったりする(渋いベテランでも、この手の映画ではチラッと出てすぐに殺される役だったりすることがなぜか多いので)。
カンヌ映画祭のニュースで、「ダ・ヴィンチ・コード」仕様のユーロスターで監督・出演者らがカンヌ入り、というのをやっていたが、車内で車掌ばりにアナウンスするイアン・マッケランの映像が見られてラッキーだった。
06.5.20