「バッシング」

2005日本
監督:小林政広
出演:占部房子
    大塚寧々



見ていると、どうにもいたたまれない気分になってくる。


ボランティア活動に行った中東で人質となった女性が、解放されて帰国すると思いもよらないバッシングの嵐にさらされる、というこの映画のストーリーは、事件の被害者をそのままモデルにしたということではない、というふうには聞いたが、そうは言っても2004年に起こった事件を誰もが思い出すだろう。
しかしこの作品ではむしろ、そのような様々な問題を含んだ事件の、“その後”が描かれる。


陰湿というほかない、“静かなバッシング”の様子には、見ながら強烈な居心地の悪さに襲われる。


自分がもしこれを受ける立場になるようなことがあったとしたら、という苦痛と、もしこんなことをやる側になってしまうとしたら、という恐怖の両方を想像してしまうからだ。


そんなふとした想像すら恐ろしい。音楽も使われず、一見淡々としたふうな、これだけ静かな作品にも関わらず。主人公の日常の描写は、痛くてたまらない。



ある日偶然、深夜番組でこの作品の監督である小林政広監督を見た。


映画をつくるようになるまでの話も興味深かったが、いちばん面白かったのは、若い頃、トリュフォーが好きでフランスへ行った、という話。


そんなに簡単にトリュフォーに会えるはずもなく、おまけにフランスに着いたとたんに高熱が出てホテルから動けず、しかたなくトリュフォー監督作品「大人は判ってくれない」のシーンそのまんまにパリの街でビン入りの牛乳を飲んで帰ってきた、という。


たしかに、好きで好きでたまらない映画の登場人物と同じことをしてみたくなる、こともある。







06.6.21