「ハンニバル・ライジング」
HANNIBAL RISING
2007 アメリカ=フランス=イギリス
監督:ピーター・ウェバー
出演:ギャスパー・ウリエル
コン・リー
レクター博士の若き日を描いた作品、「ハンニバル・ライジング」。
叔母であるレディムラサキ(コン・リー)との生活のシーンがもっとあるのかと思っていたら予想ほどはなく、殺された妹の復讐へとすぐに突き進む。ハンニバルが殺人鬼と化したのが、“殺された妹の復讐のため” という理由がどうも感情的すぎて、のちのアンソニー・ホプキンス演じるレクター博士と結びつかない、人間らしい動機だ。
レディムラサキとの生活をもっと丹念に描いて、ハンニバルが芸術的知識や優雅さを身につけてゆく様を見せ、最後の最後に復讐を果たして “人喰いレクター” が目覚める、というほうがよほどモンスターぶりを鮮烈に見せられただろうに、と思う。主演俳優というより監督・脚本の問題か。 …脚本、原作者が書いているではないか。
名作家が名脚本家になれるとは限らず、名脚本家が名監督になれるとも また限らず。だからこそ、素晴らしい作品を作り出す映画監督はすごいのだ。
ギャスパー・ウリエルが アンソニー・ホプキンス版レクターの喋り方に近づけようとしているのはわかったが、どうも2人がつながらない(数十年後にああなる人に見えない)。せっかくのリス・エヴァンスも単純な悪役像でちょっともったいない。
こんなことなら、ハンニバル・レクターの人格形成は謎に包まれて神秘的なままのほうがよかったような。まぁ、原作小説にすでに書かれているわけだが。
07.4.30