「ぼくの大切なともだち」

MON MEILLEUR AMI / MY BEST FRIEND
2006 フランス
監督:パトリス・ルコント
出演:ダニエル・オートゥイユ
    ダニー・ブーン



ダニエル・オートゥイユがコメディ、というのがまず意外だ。いや、過去に出演したこともそりゃあるだろうが、最近の出演作といえば。


警察内部の権力闘争を描き、ジェラール・ドパルデューとの、まさに一騎打ちの様相を呈したハードボイルド「あるいは裏切りという名の犬」。


“過去”、“後ろめたさ”、そして “深層心理” といったものに絡めて人種・移民問題を浮き彫りにした、特異なサスペンス「隠された記憶」。


最近は、コメディからは遠い、そんな作品に出ていたダニエル・オートゥイユが、本作では友達づくりに必死になる骨董品店経営者役。その、いつもの難しい表情での必死の姿がなんとも可笑しい。


友達になるタクシー運転手、ブリュノのキャラクターもいい。とにかくいろんなことを知っている雑学王で、大好きなクイズ番組に出たいが、ふだんは誰とでも気さくに話せるのに緊張しだすとしどろもどろで、クイズはいつも予選落ち。離婚をした時に辛い目に遭ったからと、子離れできない両親からやたらと気遣われて暮らしている。


それだけでも、日本でならヘタをするとダメ男として描かれてしまいそうな設定だが、この映画では、ただそういう人、として描かれていて、そういう視点もいい。


ちなみに、ブリュノの好きなクイズ番組はフランス版ミリオネア。これまたフランス版みのもんたみたいな司会者が登場する(どこの国でやってもあんな感じの司会者になってしまうのか)。


一度友情にヒビの入った2人の仲を、『星の王子さま』のキツネのエピソードを取り入れつつとりもつ展開も、サン=テグジュペリ好きにとってはなかなか乙なもの。


しかし…問題は監督だ。パトリス・ルコント。映画への情熱が失われたりするよりも先に、自分で区切りをつけたいと、あと3本撮ったら映画監督を引退する、とインタビューで話している。そんな上岡局長みたいなこと言わんとってくれ、と愕然(60そこそこで辞めてしまったのが残念な上岡龍太郎のことである。関西人にはおなじみ、探偵!ナイトスクープに局長として出演していたので“局長”)。


まだまだ撮ってほしい。もっとパトリス・ルコント作品が見たい。だから、3本と言わず。






08.7.9