「ツリー・オブ・ライフ」

The Tree of Life
2011 アメリカ
監督:テレンス・マリック
出演:ブラッド・ピット
   ジェシカ・チャステイン
   ショーン・ペン



子を失った母が、内面世界で神に語り、問いかけるごとに、宇宙の誕生、自然・生命の誕生、太古の海、しまいには恐竜の存在した時代、と、映像がストーリーと離れるごとに(そのうちまた本筋に戻りはするが)、見ているこっちの気持ちも離れてしまった。ごく引いた視点で、考え事などしながら見てしまう。


ふと思ったのだが、例えば、ゴダール作品の引用の嵐を見ても、様々なことを考え、思い出す。でもそれは、本当は自分の中に留めておきたかったのに、日々の些末事に追われるうち、遠くへ追いやってしまっていたことを、ゴダール作品を通してようやく呼び起こすことができた、という感覚だ。映画以外のことにも考えをめぐらすが、それはまるで、ゴダール作品を見ることによって脳が活性化されているかのような感覚なのだ(錯覚かもしれないが)。この「ツリー・オブ・ライフ」を見ている時のように、映画から自分の気持ちが離れていく感覚とは違う。


こうして、結局、非常に高評価なマリック監督作品には、どうにも入り込むことができなかった(荘厳すぎる音楽にも、かえって冷めてしまった。クラシックならゴダール作品にも使われているのだが。こういうところも、この両者の映画の違いだ)。


ちなみにこれは、マリックとゴダールの作風が似ていると思って書いた訳ではないし、もともと、両監督を比較したかった訳でもない。「ツリー・オブ・ライフ」を見ながらすっかりこの映画から気持ちが離れてしまい、ほかのことを考えていたら、ゴダールを思い出した、という話である。






2011.8.17