「家族の庭」

ANOTHER YEAR
2010 イギリス
監督・脚本:マイク・リー
出演:ジム・ブロードベント
    レスリー・マンヴィル
    ルース・シーン
    ピーター・ワイト
第83回アカデミー賞オリジナル脚本賞ノミネート



確かに、家族の問題も描いてはいるが、しかし、この「家族の庭」という邦題と、ポスターやチラシに記された“ここに集まると、喜びは倍に悲しみは半分になる”というキャッチコピーは、どうも、多少的を外しているように感じる。というのも、喜びは倍に、悲しみは半分にしたくて集まってくる友人・知人たちの中の、寂しがりでいつも人と一緒にいたいわりに、人付き合いそのものが下手なせいで空回り、自分の気持ちをへんに相手に押しつけたり依存してしまうがゆえに、親しくしたいと願っている相手から敬遠されてしまう、という、レスリー・マンヴィル演じる女性が、マンヴィルのあまりの巧さゆえ、非常にリアルで、見ていて身につまされすぎてしまうのだ。妙にうら寂しい気分になってしまい、この邦題やキャッチコピーが想起させるようなのどかな気分にはとてもなれない。そういう気分になれないのが良くない、という意味ではない(面白おかしくなければいけない、とか、幸せな結末でなければいけない、などとは、まったくもって思っていない)。実際の内容と、日本でつけたタイトルやコピーとの乖離が、微妙に納得できない感じを観客に残してしまうのが、この映画にとっては残念なことなのではないかと。


ところで、夫婦の名がトムとジェリーなのは意図的なのか、偶然なのか。






2011.11.30