「ヒッチコック」 舞台裏の巨匠にも悩みはある
Hitchcock
2012 アメリカ
監督:サーシャ・ガヴァシ
出演:アンソニー・ホプキンス
マイケル・スタールバーグ
ジェームズ・ダーシー
本物のヒッチコックもこんな苦悩やストレスを抱えていただろうか、と思いながら見る。当時として非常に衝撃的内容だったため、イメージを損なう恐れがあり、ヒットも望めないとして「サイコ」への出資をパラマウント社から断られ、結局家を抵当に入れて映画を撮ることを妻に話す際、金もコネも何もなかった若い頃のようにもう一度映画を撮りたい、と言うシーンがたまらない。一風変わった宣伝法をヒッチコック自ら考え、結果、「サイコ」がヒッチコック作品中最大のヒット作となるのは、劇中でも特に痛快な部分であり、映画史上でもよく知られる逸話である。そう、映画作りの現場が描かれている映画は、ついつい、二割増しくらい贔屓目に見てしまう。
映画が成功し、夫婦互いに随分とすれ違いもあった妻に対して、ヒッチコックがかけた言葉に、妻は、“その言葉を30年待っていた” と言い、ヒッチコックは、“だから私はサスペンスの巨匠と呼ばれる”、と答える。それもまた、小気味いいシーンである。
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冒頭で、この映画の音楽に、ティム・バートン作品や、サム・ライミ版「スパイダーマン」の匂いを感じる。共通するのはダニー・エルフマンの音楽。ということで、「ヒッチコック」も、作曲はダニー・エルフマンだった。「サイコ」でノーマン・ベイツを演じた俳優、アンソニー・パーキンスを、劇中で演じているのは、見たことのある顔のような気がするが誰だろうと思っていたら、先日「クラウド アトラス」で見たばかりのジェームズ・ダーシー(いまひとつ はっきりと覚えられない)。アンソニー・ホプキンス演じるアルフレッド・ヒッチコックは、声以外は、ホプキンスだとわからないほどの特殊メイク。
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「サイコ」の登場人物ノーマン・ベイツのモデルは、実在した殺人犯エド・ゲインである。劇中のヒッチコックは、「サイコ」制作中、ことあるごとにエド・ゲインを脳裡に浮かべるわけだが、そのヒッチコックを演じたアンソニー・ホプキンスのレクター博士役があまりにも有名な「羊たちの沈黙」には、エド・ゲインをモデルとして描かれた誘拐殺人犯“バッファロー・ビル”が出てくる。出演作がエド・ゲインづいているのは偶然か、それにしてもおもしろい偶然である。
2013/4/10