映画日記/記録

“Oh Captain, my Captain!” - 「いまを生きる」( Dead Poets Society / 1989 アメリカ / 監督:ピーター・ウィアー )

俳優 ピーター・オトゥール

アラビアのロレンス」(1962)を初めて見たのは、7年前の10月、建て替えられた映画館の、開館記念上映であった。

 

映画とは、ただ1本の優れた作品と、それに劣る作品群とが在るわけではない。ただ1本、それのみが、自分にとって唯一絶対の映画である、などとは、多くを知れば知るほど、なかなか言えないものである。

 

素晴らしい映画は、数多く存在する。しかし、それでいてなお、「アラビアのロレンス」が、ほかの何にも代え難いほど傑出した映画であることもまた、事実である。

 

12月16日、ニュースで、ピーター・オトゥールの死を知った。現地時間の12月14日のことだったという。昨年には、俳優業からの引退を表明している。ピーター・オトゥールといえば、俳優としての功績を讃えられる際には、必ずといっていいほど、米アカデミー賞との相性の悪さが取り沙汰される。稀に見る名優であることは、映画を見ればわかる。しかし、これまで8度、主演男優賞にノミネートされながら、「アラビアのロレンス」においてですら、受賞することはなかった(2003年に、演技部門ではなく、名誉賞を受賞している)。

 

とはいえ、そんなことは、取るに足らないことのようにも思える。なにしろ、ピーター・オトゥールが、例えようもないほどの名演を見せる俳優であることは、映画を見ればわかる。映画の中に刻まれた演技こそが、その才能を、真の名優であることを、証明している。

 

数々の名演を残したピーター・オトゥールだが、その出演作の中でも、「アラビアのロレンス」は、自分の映画鑑賞歴において、特別な位置を占める映画のひとつである。 今年10月にも見たばかりだ(今ではもはやデジタル上映となってしまい、ああ、フィルムで見たかった、と思いながら)。7年前の10月に初めて見て以来、〈大阪ヨーロッパ映画祭〉での上映(この映画祭では、毎年新しく名誉委員長が迎えられるが、その年は、かつて「アラビアのロレンス」の音楽を担当した作曲家、故モーリス・ジャールであった)も含め、必ずスクリーンで、これまで10回ほど見ているが、ついぞ、飽きるということを知らない。何度見ても、感嘆し、胸打たれる。何度見ても、何度見ても。

 

思い出される。ピーター・オトゥールが演じたT.E.ロレンス。駱駝に乗り、砂漠を駆ける姿。命懸けの行為により仲間であると認められ、アラブの首長の装束を贈られたシーンでの、喜びを表す、そのさま。戦場での、狂気を滲ませたロレンスを演じる、その眼。特異な魅力で惹きつけ、人を虜にする人物像を、映画の中に作り上げた。自分もまた、「アラビアのロレンス」という映画の虜となったひとりである。二度と作ることの出来ない映画だ。再現も、超えることも出来ない。50年経った現在の技術をもってしても、この映画を超えることは出来ないだろう。大規模な撮影が行われた作品だから、という意味だけで言っているのではない。そして、この映画がそれほどまでの作品となり得た一翼を担った人物こそが、まさに、俳優ピーター・オトゥールであった。

 

類稀なる、名優中の名優。不世出の大俳優だった。

 

 

 

2013年12月17日