「埋もれ木」 日々と幻想の間をながれる。

2005日本
監督:小栗康平
出演:夏蓮
    田中裕子



田舎の町の静寂と情緒は、そういえばこういう景色が決してきらいではなかったと、記憶とイメージを呼び起こす。


思わぬところに異世界への入口が現れる。


誰もいない造りかけの道、水溜まりに映りこむクジラの絵は命を得、薄墨色の闇に紙灯籠がぼんやり灯り、地中に残った古代の木々が姿を現す。


現実と幻想の境界が薄れるとき、白昼夢のような浮遊感が全身を覆う。


日常と非日常が混じりあう瞬間の美しさ。祭りの夜は、不思議なことが起こってもおかしくない。


CGの使い方は、ハリウッド映画におけるそれとは対極にあり、自然の風景に溶け込んでいる。


マグリットの絵を思わせる空も、森の中も、息をひそめたような夜も美しい。







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