「太陽」
THE SUN
2005 ロシア=イタリア=フランス=スイス
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
出演:イッセー尾形
桃井かおり
佐野史郎
1945年8月、日本が敗戦国となるその時までの、ある限られた時間の昭和天皇の姿を描いたロシア映画「太陽」。監督は、ロシア人監督アレクサンドル・ソクーロフ、昭和天皇を演じるのはイッセー尾形だ。
終始ひょうひょうとして表情を変えず、おだやかで、葛藤はすべて自らの内におさめた人物として描かれていた昭和天皇。口癖だったという “あ、そう” という言葉も、何度も登場した。佐野史郎演じる侍従長など周囲の人々とのやりとりが、差し迫った状況にも関わらず、どこかコミカルに軽みを伴って描かれるのは、やはり外国人監督だからこその視点、という気がした。同様に、終戦を決めたのち、疎開先から戻った皇后の肩に、“やっと自由になれた” と言って昭和天皇が少しもたれかかる場面にもそんな印象を受ける。日本人監督だったとしたら全く違う表現になったのでは、と思えて興味深かった。
マッカーサーと話す際に通訳を担当する米兵が、日本に詳しく、昭和天皇に非常に敬意を払っている様を描いたシーンは、実際にこんな米兵が果たしていたのだろうか、と思ったり。
焼け野原となった東京の街を俯瞰するエンドロール。煙の昇る街に玉音放送が響き、皇居から真っ白い鶴が飛び立つその映像に、ふと、そこはかとなく怖さを覚えた。
06.11.1