「消えたフェルメールを探して 絵画探偵ハロルド・スミス」

〈ドキュメンタリー〉
STOLEN
2005 アメリカ
監督:レベッカ・ドレイファス
出演:ハロルド・スミス
    グレッグ・スミス
    マイケル・コナー ほか



1990年にボストンの美術館から盗み出されて以来、今も行方の知れない、ヨハネス・フェルメールの絵画 『合奏』。50年以上も美術品の盗難事件を追い続ける探偵、ハロルド・スミスが、その 『合奏』 の行方の手がかりを知っているという人物の情報を入手し、接触を試みる様子を追うのがこのドキュメンタリーだ。


主軸は あくまでも絵画の捜索だが、むしろそれ以上に、ハロルド・スミス本人にとても興味がわく。


初めて会う人にも常にユーモアのある会話で接し、相手に警戒させない。早朝から仕事に出ることも多く、決して肉体的にも楽ではないはずなのに、それでも美術品の捜索を優先する その執念と地道さ。それも、皮膚癌と闘いながらの探偵業なのだ。


五、六十年前、まだ二十歳そこそこで、軍に入隊していた時、皮膚病の治療として、今ではとても信じられないことだが、全身に紫外線を浴びるという治療を軍医から受け、それが原因で皮膚癌を発症したのだという ―なんたること!


何十年も病と闘いながら仕事を続け、なおかつ、ユーモアを忘れなかった強靭な精神力の持ち主である探偵、ハロルド・スミス。 『合奏』 を見つけることなく亡くなってしまった彼のことを思えば、いつか、無事な姿で 『合奏』 が帰ってくることを願うばかりだ。






08.12.3