「エレジー」「PARIS」 偶然の2本。
ELEGY
2008 アメリカ
監督:イサベル・コイシェ
出演:ベン・キングズレー
ペネロペ・クルス
PARIS
2008 フランス
監督:セドリック・クラピッシュ
出演:ジュリエット・ビノシュ
ロマン・デュリス ほか
同じ日に見た2本の映画、ベン・キングズレー、ペネロペ・クルス共演の「エレジー」と、セドリック・クラピッシュ監督の群像劇「PARIS」。
この2本を同じ日に見たのは単なる偶然だが、同じ日に見たまったく関係のないこの2本に、ところどころの共通点。 『重い病にかかり自らに残された時間と命を思う登場人物』、『エリック・サティの音楽』、そしてなぜか2本ともに、『ストリップ仕立てで服を脱ぐシーン』が(「PARIS」のほうはだいぶかわいらしいノリだが「エレジー」はけっこう本気。まさか欧米じゃあれが一般的というのでもあるまいだろうに、なにゆえ映画には登場するのか)。
「エレジー」には、ゴダールの映画でも使われていた曲、あれはバッハか。「アワーミュージック」で使われていたのだったか、違う映画だったか… ベン・キングズレーの友人役デニス・ホッパーが、味があってとてもかっこよかった。
「PARIS」のような群像劇は好きだ。それぞれの登場人物がそれぞれの日常や人生で交差する。
印象深いのは、やはりジュリエット・ビノシュとロマン・デュリス演じるきょうだい。セドリック・クラピッシュ監督作にロマン・デュリスといえば、思い出すのが「スパニッシュ・アパートメント」と「ロシアン・ドールズ」のシリーズ2本なだけに、ついつい、頭の中ではそっちの主人公の名であるグザヴィエと呼びたくなるロマン・デュリス。彼演じるピエールの、「PARIS」冒頭で発覚する心臓病は多少唐突な印象も受けるが、物語がすすむにつれて蒼白になってゆく顔、こけた頬は、痛々しく、悲壮なほどだ。
パリの街を往来する人を見ながら思う、“歩いて笑って走って、みんなその幸福に気づいてない。パリで気楽に生きられるなんて。口論をして遅刻して、なんという幸せ…” というようなピエールの言葉が、ふと脳裏に残る。
様々な人を描く「PARIS」では、ほかにカリン・ヴィアール演じるパン屋の女主人もよかった。従業員にはやたら厳しく叱咤して、客が来るとそのキツい口調を一瞬にして一変させ、笑顔とやさしい口調で接する。その、商売人気質というかなんというか、あからさまな感じが妙によかった。
09.1.28