「オズ はじまりの戦い」 ホラー監督×ディズニー

Oz: the Great and Powerful

2013 アメリカ

監督:サム・ライミ

出演:ジェームズ・フランコ

   ミシェル・ウィリアムズ

   レイチェル・ワイズ

   ミラ・キュニス

 

現実世界をモノクロ、魔法の世界をカラーに描き分けている本作だが、その色彩の美しさはもちろんのこと、映像に関してなにより好ましいと思ったのは、“立体感がわざとらしくない” という点だ。もはや珍しくもなくなった3D上映のある本作だが、これまで、3D・2D両方ある作品を2Dで見た場合、明らかに3D上映の際の効果を意識したシーンが(ストーリー展開に直接的な関わりなく、画面手前に人や物を配した構図によって、奥行きや立体感を強調する等)、あざとく感じられるような場合があった。といっても、3Dで撮る以上は、3D上映時の効果を考えるのは当然のことだし、なにも “あざとい” などと、そこまで目くじら立てることでもないか、と思いもするが、なにしろ、3D映像が好きではないのだ。必ずしも3Dにする必要性を感じていない者としては、やはり、3D偏重をそれほど歓迎する気もない。今回、この映画を2Dで見たが、3D上映での効果も考えられているであろうことは言うまでもないとはいえ、2Dで見てもあざとさが気にならない、3Dを意識させない立体感だったのがよかった(ここまで言ってしまうと、果たして3D的には不成功だったのか、という話になってしまうが)。

 

主演のジェームズ・フランコは、同じサム・ライミ監督版の「スパイダーマン」シリーズにも出演していたが、そのほかミシェル・ウィリアムズレイチェル・ワイズレイチェル・ワイズは、昨年の「ボーン・レガシー」でも 意外な出演作だ、と思ったが、アクション作品と思えぬ細やかな演技が際立っていた)など、およそファンタジー作品のイメージのない演技派がそろっているあたりも面白い。そして、なんと言っても “陶器の少女” だ。あの愛らしさがなんとも言えない。

 

サム・ライミ監督といえばホラーだが、近年だと「スペル」(2009)を監督しているものの、「スパイダーマン」シリーズ(ライミ版は完結したが)のイメージが定着した上に今回のディズニー作品ときたものだから、ファンタジー方面へ行くのか?と、物足りない感じがしないでもない。しかしホラーだって、現実にないことを描いているという点では、大きく捉えればファンタジックなものだ、と言えないこともない。もっとも大きな枠で捉えれば、ホラーもファンタジーも同じ穴のむじな、いや、親戚のようなものではないか。たぶん。などと思ってみたりしつつ、またホラーを撮ってほしいのだが(※リメイク版「死霊のはらわた」は製作のみ)。その前にオズの続編でもあるのだろうか。

 

 

2013/3/14