「アデル、ブルーは熱い色」
La vie d'Adèle – Chapitres 1 et 2
Blue Is the Warmest Colour
2013 フランス
原作:ジュリー・マロ 『ブルーは熱い色』
監督・脚本:アブデラティフ・ケシシュ
脚本:ガリア・ラクロワ
出演:アデル・エグザルホプロス
レア・セドゥ
(カンヌ史上初めて、監督だけでなく、主演女優2人にもパルム・ドールが贈られた)
主人公の名は、原作コミックにおいてはアデルではないという。監督が、主演アデル・エグザルホプロスの名を、そのまま使いたかったのだとか(アデルとは、アラビア語で正義の意であると、劇中の会話に登場する)。
アデルの あの 演技に見えないような演技は、しかしどうやって引き出されたものなのだろう。寝顔も、食事の様子(食べるシーンはアデルの生命力の象徴か)も、まるでまったくの自然であるかのように見えてしまう。
2014/4/9
「ハウンター」
〈未体験ゾーンの映画たち 2014〉
HAUNTER
2013 カナダ=フランス
監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ
脚本:ブライアン・キング
出演:アビゲイル・ブレスリン
スティーブン・マクハティ
エレノア・シシー
2014/4/9
「コーヒーをめぐる冒険」
OH BOY
2012 ドイツ
監督・脚本:ヤン・オーレ・ゲルスター
出演:トム・シリング
マルク・ホーゼマン
フリデリーケ・ケンプター
確かに、コーヒーを飲もうとするが飲めない、というシーンが、ことあるごとに出てくるのだが、それは、主人公ニコの この1日が、いかについていないかということを象徴的に表したものであり(自分と周囲の世界との間に違和感を感じる、という台詞もあり、周囲の世界とのそういう “すれ違い” も含めて象徴している、とも受け取れる)、コーヒーを飲みたいがために行動する、何かをする、という、コーヒー中心のストーリーではないので、この邦題だと、意味としてはズレる(なにしろ、原題は「Oh boy」であるし)。
ニコが、かつての同級生ユリカに対して、ある行動を、これが過去の清算であるならば やめておいたほうがいい、と言うシーンがあるが、(これには、子供の頃ニコがユリカをいじめていて、ユリカは立ち直るためにかなりの時間の費やした、という経緯がある)この場合むしろ過去を清算するほうがよかったのでは、と思うなど。
2014/4/8
「パイオニア」
〈未体験ゾーンの映画たち 2014〉
Pionér
Pioneer
2013 ノルウェー
監督・脚本:エーリク・ショルビャルグ
出演:アクセル・ヘニー
ステファン・ラング
ステファニー・シグマン
実話をもとにした作品である。1980年代前半、北海で石油・天然ガスが発見され、ノルウェー政府は、それらを運ぶために、海底500メートル地点でのパイプライン敷設に着手。その大規模な計画に関わったプロのダイバーである兄弟、クヌートとペッター。兄のクヌートが実験潜水中に死亡し、その際の上層部の対応に不信感をいだいた弟ペッターが、事件の真相を突き止めようとする。
特集上映〈未体験ゾーンの映画たち 2014〉という形で、ほんの数回しか上映されないことがもったいないほど、見応えのある作品だった。なにしろ、“良作であるにも関わらず、知名度が低いなどの理由で日本未公開のまま終わってしまいそうな作品を、発掘してスクリーンにかけ、劇場未公開となるのを阻止しよう” という趣旨の特集上映なため、昨年の第1回でも、見応えある作品が選ばれており(「ザ・ウォーター・ウォー」など)、なかなか侮れない特集である。
たとえば、真相に近づいたために命を狙われていたペッターが海中に潜っている時、ボート上に残っていた同僚が、ペッターであると人違いされて、ボートを爆破されてしまうシーン。海中から見上げたペッターは、近づいてきた別のボートに火の手が上がり、誰かがそこから海に飛び込んで逃げ、まだ同僚が乗っているはずのボートに、無人となった火だるまのボートが突っ込んで爆発する、その一部始終を目撃する。海上でボートが爆発するのと同時に、海中では巨大な赤い水泡が音もなく膨らむかのように見えるところなど、ストーリー上は緊急事態でありながら、映像的にはある種の美しさもあり、その独自の表現が印象的だった。
とにかく、日本での知名度の低さゆえの小規模公開が残念だ。ノルウェー作品というと、最近ではベント・ハーメル監督などが注目されたが、やはり、ヨーロッパ映画の中でも、英仏独伊の作品と比べると、日本での公開本数も少なく、となれば、たとえ良い作品・監督・出演者であっても、知名度が低くなるのは当然で、ゆえにこのような形になってしまう。この 「パイオニア」 出演者の中では、アメリカの俳優ウェス・ベントリーが、日本ではまだいちばん知られていると言えるが、ウェス・ベントリー出演、というのは、売りにならないのかどうなのか(自分の場合は、ウェス・ベントリーの出演作を見るのは久しぶり、というのが、じゅうぶん見に行く動機になったが)。とはいえ、劇場未公開で終わってしまうよりは、特集上映中のたった数回でも、上映されてよかった、ということか。
ちなみに、アル・パチーノ、ロビン・ウィリアムズ共演の、2002年のクリストファー・ノーラン監督作「インソムニア」が、ノルウェー映画のリメイクであることは聞いてはいたが、その元となったオリジナル版は、この「パイオニア」の監督の作品、とのこと。
2014/4/7
「ポール・ヴァーホーヴェン/トリック」
〈未体験ゾーンの映画たち 2014〉
Steekspel
2012 オランダ
監督・脚本:ポール・ヴァーホーヴェン
脚本:キム・ファン・コーテ
一般公募の脚本を含む
出演:ドキュメンタリー部分 - ポール・ヴァーホーヴェン ほか
映画部分 - ピーター・ブロック ゲテ・ヤンセン ほか
冒頭の4分間のみを公開し、その続きは、脚本を一般公募して映画を制作する、という試みの作品。監督はじめ、プロの脚本家らで、応募作品の中から、これは使える、というものを選び、作品として形作っていった、というもの。
前半のドキュメンタリー部分では、記者会見でこの企画を発表する様子、脚本作成の様子、俳優のカメラテスト、撮影風景などがおさめられており、後半が、そのようにして作られた作品そのもの、という、ドキュメンタリーとフィクション作品との二部構成。
エンドロールでは、脚本応募者の名前もきっちり流れる。
2014/3/31
「チェインド」
〈未体験ゾーンの映画たち 2014〉
CHAINED
2012 カナダ
監督:ジェニファー・リンチ
脚本:ダミアン・オドンネル
出演:ヴィンセント・ドノフリオ
エイモン・ファーレン
ヴィンセント・ドノフリオがじつに巧い。トラウマを抱え、それを消せないまま常軌を逸した殺人を続ける、という救いのない役だが、それにしても巧い。虐待の連鎖。台詞にも出てくる、比喩としての“食物連鎖”。監禁されている主人公が、少年時代から足に繋がれ続けた鎖。タイトルはこれらを表している。サスペンスとしては珍しい題材ではないとはいえ、監督がジェニファー・リンチなので(前作「サベイランス」も見たし)、気になって見に行った。
顔を覚えられない(つまり自分の感覚においては非常に覚えづらいタイプの顔立ち)若手俳優というのは何人かいるが、ベテランの中で、自分にとって いまだ覚えづらい顔立ちの俳優のひとりといえば、ヴィンセント・ドノフリオなのであった(最近は、もしやあれはドノフリオではないか、と思い名前を確認する、くらいまでにはなった)。
2014/3/30
「グランドピアノ 狙われた黒鍵」
GRAND PIANO
2013 スペイン=アメリカ
監督:エウヘニオ・ミラ
出演:イライジャ・ウッド
ケリー・ビシェ
“難曲中の難曲” として劇中使用されている「ラ・シンケッテ」は、監督自ら作曲したものなのだとか。
師匠が遺したグランドピアノ、ベーゼンドルファーのインペリアルを弾くこととなる主人公。
ベーゼンドルファー … 1828年、ウィーンで創業したピアノブランド。劇中に登場する ベーゼンドルファー Model290 インペリアル とは、ベーゼンドルファーにおける最上級モデルで、通常の88鍵の下に9鍵の低音部を拡張し、97鍵ある。誤演奏を防ぐため、その低音部の鍵盤は黒く塗られている。〈チラシ解説より〉
イライジャ・ウッドのピアニスト役は、相変わらずいろんなタイプの役に挑戦するのだなぁという感じで、まあいいにしても、それほど深みのない犯人役に、ジョン・キューザックとは。最近、(本人の意向かどうかは知らないが)殺人犯役などがふえてきたとはいえ、かなり拍子抜け感のある役だったが、あのぐらいの役にジョン・キューザックあたりをキャスティングするものなのか。
2014/3/28