「ベティの小さな秘密」 少女の巣立ち。
JE M'APPELLE ELISABETH
2006 フランス
原作:アンヌ・ヴィアゼムスキー
監督:ジャン=ピエール・アメリス
出演:アルバ=ガイア・クラゲード・ベルージ
ステファヌ・フレイス
バンジャマン・ラモン
10歳のベティを取り巻く、小さな、いや、少女にとっては大きくてままならない世界に、精一杯対峙しようとするその姿がけなげだ。
空想や不思議な話を、すんなり信じることのできる少女の愛らしさ。
ひとり怯える青年イヴォンに、『私が面倒を見てあげる』と言ってあれやこれやと世話をやき、それによって独立心の芽生えてゆく様子が丁寧に描かれる。ベティがイヴォンをとても好きだと思うさま、そして、たった一人で助けよう、守り抜こうとし、それを全うしようと起こす行動。それらが子供特有の感覚をもって描かれ、とてもこまやかだ。
イヴォンに、『あなたにエリザベスと呼ばれるととてもうれしい』と語るベティ。
ある時期までの子供しか持ち得ない無垢さ。それを持つベティが、やがて、ベティという愛称でなく、エリザベスと呼ばれるに相応しい女の子へと変貌を遂げてゆく、その直前の一瞬。その瞬間のベティの、繊細さも、けなげさも純粋さも、とても愛らしく美しくて胸に沁みる。誰にも知られず秘かに光る鉱石のようだ。2人で手をつないで歩く姿も愛らしい。
08.10.29